【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「そ、それは、私に利点がありすぎるのではないですか?団長のご両親も私なんかで納得なさるとは思えないですし……」

 厚遇すぎてにわかに信じがたい。
 そもそも、そんな旨味のない結婚を彼の家が承諾するとも思えない。没落寸前のスターリング子爵家と縁を結んだところで、フォスター伯爵家には何の益もないのだから。

 本気ですか?と暗に問えば、ランドルフは心外とばかりに眉をひそめた。

「利点がありすぎるも何も、契約結婚なんていう常識外れなことを頼んでいるのはこちらなんだ。金で雇うとはいえ、人一人の人生を俺の身勝手で縛るのだから、それなりの対価を支払うべきに決まっている。君はただ利益を享受すればいい」
「い、いえ……でも……」
「あとは俺の両親か。それこそ何も問題はない。先程の手紙にも、貴族女性ならもはや誰でもいいと書いていた。君は学問を修め、国に奉職する立派な貴族女性だ。文句などあるはずもない」
「ええっと……」

 困った。非常に困った。
 ランドルフはなぜかリーゼと結婚する気満々になっている。
 思いついた辞退の理由もことごとく論破されて、リーゼの背筋に冷や汗が滲む。
< 14 / 170 >

この作品をシェア

pagetop