【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 だが、ランドルフはグッと眉間に皺を刻んだかと思うと、全ての懊悩を吐き出すような深いため息を吐いた。

「これ以上は止められなくなりそうだ」

 止めなくていいのに、との呟きが口から衝いて出そうになる。すんでのところで言葉を呑み込めたのは、ランドルフがリーゼの体を慮ってくれているのを理解しているから。
 
 現に彼の張り詰めた昂りは、ズボンを押し上げてリーゼの太腿に触れている。熱い剛直に奥処を貫かれた記憶が蘇り、リーゼはキスで火照った顔をさらに赤く染めた。

(私が我儘を言っちゃダメよね……)

 疼く体を鎮めるように、リーゼはランドルフの胸に顔を埋めて溜まった劣情を吐き出すように熱い息を漏らした。

「三日後、朝一番に迎えに行く」
「はい。お待ちしていますね」

 つむじの上に落ちる、少し切実な響きを帯びた声にリーゼは笑ってしまった。
 この四日間、彼は毎日この言葉を口にする。きっと、リーゼが帰るのを待ち遠しく思ってくれているんだろう。
 連れて帰ってくれてもいいのに、リーゼの体を案じて待っていてくれているのだ。愛されているのだとまざまざとわかって、羽先でそっと撫でられたように胸がくすぐったい。
 
 込み上げて溢れる愛しさのままリーゼはランドルフに抱きつく腕にいっそう力を込めた。
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