【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 女性への不満を一気にぶちまけながらランドルフは好物のレモンクッキーに手を伸ばした。

「俺の次の代は、縁戚から養子をもらってくればそれで事足りる。結婚なんてせずとも問題はない」

 小さなクッキーを一口で頬張り、しかつめ顔で咀嚼している。

「でも、そうは仰ってもお母様はご納得されないのではないでしょうか?」

 もぐもぐと口を動かしているところ申し訳ないが、リーゼは話を蒸し返すことにした。
 なぜなら彼がこのまま結婚をしてくれないと、リーゼも困るから。

「…………」
「それに、女性の中にも理知的で穏やかな性格の方はたくさんいらっしゃいます。ですからそのように毛嫌いされなくても……」
「理知的で穏やか、か。少なくとも俺に近づいてくる女で、そんな殊勝な女は一人もいなかった。今後現れるとも思えない」

(むむ……)
 
 なんて意固地な。
 だが、リーゼもめげない。

「夜会でお知り合いになる女性以外にも視野を広げてみたらいかがですか?ほら、騎士団にはベルさんもいらっしゃいますし」
「……あれは、確かに頭はキレるが、穏やかとはだいぶ程遠いところにいるだろう」

(まあ、確かに……)

 ランドルフは呆れた調子で片眉を上げた。リーゼもまた、第二騎士団唯一の女騎士の勇ましさを思い出して、リーゼは肩を落とす。
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