【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「王宮の官女の方とかはどうです?皆さん、官女試験を突破した才媛ですし。最近よく出入りしているモーガン伯爵家のメリル様とか……」

 何かにつけては騎士団の詰所に来て、頬を染めてうっとりとランドルフを見つめる官女の中で、比較的大人しめな印象の官女の名前を出せば、彼は露骨に顔をしかめた。
 
「才媛?昼休みに中庭でかしましく男の品評をしている奴らがか?ああいう女こそ信用ならない。論外だ」
「そ、そうですか……」
「というかさっきから何なんだ、スターリング。俺が結婚しようとしまいと君には関係ないだろう」
「か、関係あります!」
「は?」

 疎ましげな視線を向けられ、ついリーゼはそう啖呵を切ってしまった。

 部下として出過ぎた真似だとはわかっている。わかっているけれども、リーゼはどうしてもランドルフに結婚してほしかった。

 それは、己の中にいつまでも居座るこの不毛な片想いに終止符を打ちたかったから。叶わないこの恋慕を、完膚なきまでに叩き壊してほしかったから。

 でもそんなこと、言えるはずもない。

「…………私はただ……結婚しているとかしていないとか……そんな些細なことで団長の功績が正当に評価をされないことが嫌なんです……だから……」
 
 この言い訳も決して嘘ではない。
 ただ本心ではないだけで。でもそれすら余計なお世話であることも理解はしている。
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