佐々木くんは見えるらしい
「ぜったい、いまのぜんぶウソでしょ? 手、貸してよ」

 ムッとした顔で手を差し出しながら言ってやる。

 女の子に意地悪するなんていけないんだ。

「もう居ないから見えない。それにこんなところで君はいいのか?」

 ちらっと周りを見て彼が言う。

 それって、男の子と学校で手なんかつないでいいのか、って意味だよね?

「ずるいよ、自分だけ見えるなんて」

 手を引っ込めて私はムスッとした顔をした。

 それなのに

「真実を知るには、君にはまだ早い」

 彼は悪い子な顔して笑ってる。

「なに言ってんの……!」

 ムカついて、私は彼の背中を手で強く叩いた。

「痛っ、君のそれは正当防衛じゃないぞ?」
「うるさいっ、いいんだもん」

 びっくりした顔の彼にふっと笑って、私は先に教室に入っていく。

 桜小学校五年三組には入学式以来、ずっと学校に来ていなかった男の子がいる。

 彼はいつも私に難しい言葉を教えてくれた。

 たくさん助けてくれた。

 そんな彼は今日から五年三組の教室の窓際、一番後ろの席の番人となる。

 名前は佐々木くん。

 私の大切な友達で……幽霊が見える――。
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