佐々木くんは見えるらしい
 しょうがないな、と思って紗菜ちゃんについて行って、色々あって、それで、私はいま……

「――君は、本当にこりないな」

 佐々木くんの家にいる。

 玄関で、私と顔を合わせるなり、佐々木くんは私の後ろに視線を送りながら面倒くさそうに言った。

 たぶん、彼には〝見えている〟。

「面目ない」

 私は最近テレビで見て覚えた、恥ずかしくて合わす顔がない、っていう意味の言葉を口にした。

 ここではじめてお披露目って感じ。

「なんだその言い方」

 佐々木くんは心の底から嫌がってるみたいな顔をした。

「いいじゃん、佐々木くんがいつも大人みたいな言い方するから、私もちょっとは大人っぽいこと言いたかったんだもん」

 思わず、唇をとがらせる私。

 たしかに小学生だけどさ、私ばっかり子供で、なんかイヤなんだもん。

 佐々木くんが知ってることは、私にはわからないことばっかりで……。

 あの日、紗菜ちゃんを助けてくれた日、佐々木くんは用事を思い出したとかで急いで帰ってしまった。

 そのあとは、一ヶ月くらい、ずっと会っていなかった。

 だって、会う理由が見つからなかったから。

 だから、あの日、佐々木くんが呟いていた言葉の意味を私は聞けてない。
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