心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

01 初顔合わせ

 ――あら。素敵。

 話を聞いてから想像していたより、格段に美形な侯爵様だわ。

 もうすぐ自分の夫となる人を初めて近くで見た私の感想は、まるで他人事《ひとごと》だった。そして、仕方なく妥協して私と結婚することになってしまうなんて、本当に可哀想とも。

 城中の中庭にある薔薇園は、本来ならば王族にしか入ることを許されていないと聞いている。けれど、王族と深い繋がりを持つ彼には、特別に許されているのだろう。

 姿を確認して早足で進んだ叔母は、事前約束の通り、待ち合わせの場所に立って居た男性に軽く手を振った。

「ジョサイア。待たせたかしら……こちらが、ジョサイア・モーベット侯爵。貴女の旦那様になられる方よ……そして、今回縁談を申し込んで頂いた私の姪、ドラジェ伯爵令嬢レニエラです」

「はじめまして。レニエラです。侯爵様。お会いできて嬉しいです」

 叔母ヘイズ公爵夫人アストリッドのテキパキとした紹介に合わせて、私は軽くドレスのスカート裾を摘んで、礼儀作法通りのカーテシーをした。

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