心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
 叔母からモーベット侯爵の縁談打診を聞かされ、両親はあまりの喜びのあまりに、手を取り合って庭を駆け回った。何の面白い冗談だと思うかもしれないけど、これって、ただの本当の話。

 まあ……それだけ、元婚約者に婚約破棄されてしまった娘のことを思い、深く心を痛めてくれていたのだ。

 確かに婚約破棄されたことは両親や弟には、悪いことをしたと思う。あの婚約破棄の件に関しては、自分は何も悪くないと言い切れるけど。

 現実主義で有能な弟アメデオは「絶対に、モーベット侯爵に何を言われても、離婚に応じては駄目だ」と、縁談が来てから何度も何度も私に言い聞かせていた。

 同じ邸に住む実の姉と会うたびに反復して言い重ねるんだから、無自覚な催眠術にでもかけようと思っているのかしら。

 あの子はヴィアメル王国の貴族の離婚には、双方の同意と教会の許しが必要なので一度結婚してしまえば、こちらのものだと考えているらしい。

 その時点では、当事者の私たち二人は顔合わせをしてもなく一言も言葉を交わしていなかったというのに、なんだかとても気が早い話だと思う。

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