心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
 何故、この薔薇園でモーベット侯爵が私と会うことになったかというと、宰相補佐という高位文官として王の側近を勤める彼が、拗れに拗れた隣国問題解決のために、多忙過ぎてしまったためだ。

 かつ、そんなモーベット侯爵はとある理由から二週間後に結婚出来る相手を、急遽で探していた。

 何故かと言うと、その時に結婚するはずだった彼の婚約者が……いいえ、三日前に元婚約者となってしまった女性が書き置きだけを残して、騎士と駆け落ちして逃げてしまったからだ。

 けれど、モーベット侯爵は結婚するために準備を済ませていて、なんなら王家筋モーベット侯爵家が結婚するからと、国外より国賓級の招待客も来ていて、観光も兼ねて既に滞在しているらしい。

 今ではもう「花嫁になる女性が駆け落ちで逃げてしまったので、結婚式を取りやめにしたい」などと言い出せるような、そんな生やさしい段階にはなかった。

 とは言え、彼は王家筋であるものの、王位継承権のある王族ではない。それに、結婚するはずの逃げた美しいご令嬢だって、国外ではそれほど名が知られている訳でもない。

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