心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
 ここは人目のない夫婦の部屋で、彼だって今日は一日中、周囲に気を使って疲れているだろうに……きっと、ジョサイアは、とても真面目な性格なんだわ。

 まるで、夜会でエスコートをしてくれるように、ジョサイアは私の手を取って導き、続き部屋の扉の前にまで連れて来た。

 お礼を言って就寝の挨拶をしようと背の高い彼を見上げれば、落ち着いて低い声が鼓膜に響いた。

「一人で大丈夫だと……そうやって、元婚約者から婚約破棄されてからずっと、自分に言い聞かせて来たんですか?」

 ジョサイアの水色の目が、やたらと近い。気がつけば、彼は耳元で囁き肌に吐息を感じるほどに距離が近かった。

 美形の男性がこんな至近距離に居て、胸が高鳴らなかったと言えば、それは嘘になってしまう。

 けど、もう私は何かに期待をして裏切られることは、もう二度とされたくない。もう二度と。

 ジョサイアは駆け落ちして逃げてしまった元婚約者を、とてもとても大事にしていたと噂で聞く。

 彼女のことが、本当に好きだったんだろう。

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