心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
「ああ……ジョサイアは今日も、遅いと思うわ。日はまたぐんじゃないかしら。なんでも結婚式前から、国交問題が上手くいかずに、本当に忙しいみたいなの。だから、明日は王家から招待された夜会があるから、休日が取れたと言ってたんだけど……」

「え! そうなんだ。ジョサイア義兄さんは、結婚式をしてから、ずっと仕事が多忙だったということ?」

 いつも冷静なアメデオは目を見開いて、珍しく驚いた表情になっていた。

「それは、そうでしょう。式の次の日の朝には、仕事に出て居たんだから……あ。一日だけ、上司の宰相がお休みをくれたのが、さっき言った劇を観に行った時よ。とは言っても、書類を見て欲しいとかで夕方に城に呼び出されたわ。本当に、大変みたいなの」

 弟の大袈裟な反応に苦笑した私は、当たり前よと言わんばかりに頷けば、アメデオは座っていたソファからすっと立ち上がった。

「挨拶だけでもしようと思ってたけど……もし、義兄さんが今日早く帰ってきても、邪魔者になりそうだし、帰るよ」

「え……? アメデオ。どうかしたの?」

「いや、新婚ほやほやな夫婦の邸に来るというのに、事前の情報収集を怠った僕が悪いんだ。姉さん。とにかく、また連絡するから」

「ええ……わかったわ。気を付けて帰ってね」

 私が頷いたところを確認してから、アメデオは颯爽と扉を開けて出て行った。

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