心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
 私の視界は華やかなドレスの色に溢れ、その場に居る貴族たちは、当たり前のように私が嫁いだ先の事情を知っている。

 今までに感じたことなんてなかった、羨望の眼差しを向けられることがこそばゆい。

 私は夫ジョサイアの求める条件に、ちょうど良かった。だから、彼から結婚を申し込まれただけなのは、皆知っていると思う。

 けど、ジョサイア・モーベット侯爵と結婚して妻を名乗れるという確固たる地位を与えられたことは、正式に婚約を結んだことと何も変わらないので、女性側が私を羨ましがってしまうことは仕方ない。

 ジョサイアが隣に居るというだけで、ただそれだけなのに、不思議と誇らしい気分になった。

 ……まあ、彼はいずれ離婚することになる仮の夫なんだけどね。

 ジョサイアは迷うことなく、会場中央奥の階段へと向かい、陛下の居る王座へと近付いた。

 側近の彼は陛下の近くに侍ることが日常だろうけど、私はアルベルト様にこうして直接ご挨拶するのは、多分、生まれて初めて。

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