契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
1、クリスマスイブの大失態


 街がイルミネーションで煌めき、人々が温かそうな装いで行き交う十二月中旬。

 駅から真っ直ぐに伸びるBCストリートのイルミネーションは、毎年多くの人々で賑わいをみせる。

 等間隔に植わった欅の街路樹は細かな青い光を纏い、陽が落ちる時間帯から辺りは幻想的な光景に包まれるのだ。

 今年も綺麗だな……。

 BCストリートのイルミネーションは、子どもの頃から毎年見てきた。

 五年前この街のツインタワー内にある食品加工会社に就職してからは、毎日帰り道にこのイルミネーションを横切って帰宅している。

 クリスマスイルミネーションが点灯されている期間は、毎日この綺麗な景色を見ながら帰るのがささやかな楽しみだ。


「ただいまー」


 会社の入るツインタワーから徒歩で約二十分ほどのところに、私──千葉澪花の生まれ育った家がある。

 家族四人暮らしだった家も、今は二歳年上の姉、萌花と二人暮らし。

 父は私が小学生の頃に蒸発し、その後、帰らぬまま亡くなったと聞いている。

 母は数年前から心臓疾患のため入退院を繰り返していて、現在は二カ月ほど前から隣街の病院に入院しているのだ。

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