契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「ありがとうございました」


 車が停車したと同時、お礼の言葉を口にする。

 手早くシートベルトを外した蓮斗さんが運転席を降りて行って、もうこの流れには慣れるべきなのかと思いながらドアが開くのを大人しく待つ。

 でもやっぱり落ち着かない気持ちで、ドアが開いたと同時にぺこりと頭を下げていた。


「ありがとうございます」


 差し出された手に触れ、車外に足を伸ばす。

 立ち上がったところで、不意に屈んだ蓮斗さんの顔が近づくのを感じた。


「っ……⁉︎」


 一瞬、心臓の動きが止まったのかと思った。そのくらいの衝撃が走る。

 唇に触れる柔らかさ。ふわりと、ほんの一、二秒のことだった。

 鼓動が暴走し始めた時には、もう目前で目と目が合う。


「次に会えるのを、楽しみに」


 返事が出てこなくて、こくりと頷いたついでに俯く。

 蓮斗さんは「おやすみ」と私の頬をひと撫でして離れていく。

 運転席に乗り込んだ綺麗な顔を盗み見て、どきんと胸が音を立てた。

 ひらりと手を振り、蓮斗さんは車を出していく。

 離れていく車を見送りながら、口づけが落とされた唇を手で押さえていた。

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