蝶と柊 ~冷たくて甘い君~
「ふふ、ありがとう」
って言うしかなかった。
お会計を済ませた如月くんは、あっち行こ、と言って、私の数歩前を歩いてイートインの席に向かう。
なんとなく、その背中は温かく感じた。
「…んで?何落ち込んでんの?」
席に着くやいなや、単刀直入に聞いてくる如月くん。
話したくないならいいよってさっき言ってたのに!
「ううん、如月くんに話すようなことでもないから気にしなくていいよ」
実際気を遣わせまくってるし、相談までするのは申し訳ないと思って首を横にブンブンと振る。
でも、如月くんは私の頬を両側から押さえて、
_捕まえて。
「だーめ。さっきからあんた、やばい顔してるし」
それに…と続けて、
「ほっとけねーの。そーゆーの、俺」
少し目線を下に逸らしながらそう言う彼は、どこか寂しそうな表情。
この表情を、私は知ってる気がする。
「ありがひょう、でもお気遣いにゃく」
頬を押さえられたまま喋ったので変な感じ。
「そっか。ま、話したくなったらでいーよ。いつでも待ってる」
そう言って、ゆっくり手を外してくれた彼はきっと相当優しい。
結構変わってる人だけど、根はとってもいい人なんだなって思った。
気を取り直して、ドーナツに手をつける。
噛むと広がるチョコレートの風味に思わず舌が落ちそうになる。