優しい鳥籠〜元生徒の検察官は再会した教師を独占したい〜
「あの日もここで、俺がつぐみさんを抱きしめたんだ」
「うん……そうだったね。まさかまた翼久くんとここに来られるとは思わなかった……」

 あの日、嘘をついて後悔ばかりした記憶。それを思い出したくなくて逃げ続けた。

「ねぇ、つぐみさん。俺はつぐみさんと付き合えてすごく幸せ者だって思ってる」

 それはあの日、『先生の彼氏は幸せ者ですね』と呟いた翼久の言葉のようだった。

「だからね、この先ずっと、つぐみさんを幸せにするのは俺でありたいんだ」

 そこまで言った翼久は、優しく微笑むとポケットから何かを取り出した。翼久が手のひらサイズの小さな箱を開けると、中にはダイヤが輝く指輪が入っていた。

「つぐみさん、俺と結婚してください」

 翼久の言葉を聞いたつぐみの瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちる。

 あの日、この場所に置き去りにしてしまった感情があった。それは一人では取り戻すことの出来ない、淡い恋の原形ーー。

「私なんかでいいの?」
「つぐみさんじゃなきゃダメなんだ」

 つぐみは満面の笑みを浮かべると、翼久にキスをした。

「翼久くんが恋人で良かった。これからもよろしくね……旦那様」

 つぐみが言うと、翼久にしては珍しく顔を真っ赤にした。

「俺の奥さんは可愛い過ぎて困る……」

 二人は互いに微笑み合うと、再びキスをした。

 書庫(カゴ)に閉じ込められたままだった二人の想いがようやく重なり、この場所から温かくて優しさに包まれた未来へと羽ばたいていった。
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