この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

22話 父親の呪縛

 早朝に要塞を出たこの日、私とメルさんが最後にたどり着いたのは、森に囲まれたのどかな村にある小さな聖堂だった。
 あたりはすでに真っ暗で、森の奥からはホーホーとフクロウの鳴き声が聞こえてくる。
 聖堂は老齢の女性司祭が一人で管理しているらしく、女の二人旅──片や男装、片や着の身着のままという、どう見ても訳ありの私達も快く迎え入れてくれた。

「──さて、メルさん。どうしてこんなことになったのか、話してくださいますよね?」
「はい……」

 簡素なベッドが二つ置かれただけの部屋で、私はメルさんと向かい合う。
 しょんぼりとする彼女の肩には子ネコが一匹乗っており、慰めるみたいに頬に擦り寄っていた。

「にゃう、みゅうー……」

 そのモフモフの体が朝より大きくなっているのは、ここまでの道中、メルさんの負の感情をもりもり食べていたためだろう。
 鳴き声も、少しばかり成猫のそれに近づいたようだ。

(ミットー公爵閣下にベッタリのチートもそうだけど、同一人物の負の感情を集中的に摂取すると、成長が早いみたい……)

 子ネコのおかげで、最初は頑なだったメルさんの表情もいくらか和らいでいた。
 ただし、彼女に巣食った負の感情は、子ネコ一匹の消費では追いつかないくらい、根深いもののようだ。

「私は今回、ラーガストまでの道中において、タマコ嬢を殿下のお側より排除するよう申し付けられておりました」
「えっと……排除、とは? 誰がメルさんにそう言ったんですか?」
「父……です。端的に申し上げれば──私は父から、あなたを殺すよう命ぜられたのです」
「え……」
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