この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜
第五章 ネコ一家新規加入
25話 無力な傍観者
「殿下! 殿下ぁ! ああ……何ということだっ……!!」
上司であり、現国王の唯一の王子であるミケランゼロが崖から落ちるのを、なす術もなく見送ってしまった准将は、地面に両手を突いて打ち拉がれる。
「殿下を失い、我々は……ベルンハルトは、これからどうすれば……」
「わ、私の……私のせいだ……私がタマコ嬢を攫ったりしたから……」
絶望と悲しみにガリガリと地面を掻く准将の背後では、茫然自失となったメルが幽鬼のような青い顔をして立ち尽くしていた。
ところが、そんな二人とは対照的に、普段と少しも変わらない口調で言うのはロメリアだ。
「滅多なことを言うのもではありませんわ、お兄様。殿下は、亡くなってなどおられませんわよ」
「は……?」
「えっ……?」
「お兄様もメルも下を見てご覧なさいまし。彼らのひしゃげた遺体など、どこにもございませんわ」
そう言われた准将とメルは顔を見合わせ、それから恐る恐る崖の下を覗き込んだ。
「た、確かに……下には崩れた崖の先端が散らばっているだけで、殿下達のお姿は見えないが……」
「あの、ロメリア様……崖の残骸に埋もれているという、可能性は……?」
情けない顔をした兄と従者を、ロメリアは冷ややかに一瞥する。
そうして、きっぱりと言った。
「殿下は、ご無事ですわ。おタマとネコもです」
「お、お前は、何を根拠にそんなことを……」
「わたくしは、殿下達が落ちていかれる様をつぶさに見ておりましたが……消えたのです」
「消え、た? 消えたとは、どういうことでございましょうか、ロメリア様」
准将とメルが再び顔を見合わせる。
ロメリアは崖の際に仁王立ちして腕組みをし、眼下を睨みつつ続けた。
上司であり、現国王の唯一の王子であるミケランゼロが崖から落ちるのを、なす術もなく見送ってしまった准将は、地面に両手を突いて打ち拉がれる。
「殿下を失い、我々は……ベルンハルトは、これからどうすれば……」
「わ、私の……私のせいだ……私がタマコ嬢を攫ったりしたから……」
絶望と悲しみにガリガリと地面を掻く准将の背後では、茫然自失となったメルが幽鬼のような青い顔をして立ち尽くしていた。
ところが、そんな二人とは対照的に、普段と少しも変わらない口調で言うのはロメリアだ。
「滅多なことを言うのもではありませんわ、お兄様。殿下は、亡くなってなどおられませんわよ」
「は……?」
「えっ……?」
「お兄様もメルも下を見てご覧なさいまし。彼らのひしゃげた遺体など、どこにもございませんわ」
そう言われた准将とメルは顔を見合わせ、それから恐る恐る崖の下を覗き込んだ。
「た、確かに……下には崩れた崖の先端が散らばっているだけで、殿下達のお姿は見えないが……」
「あの、ロメリア様……崖の残骸に埋もれているという、可能性は……?」
情けない顔をした兄と従者を、ロメリアは冷ややかに一瞥する。
そうして、きっぱりと言った。
「殿下は、ご無事ですわ。おタマとネコもです」
「お、お前は、何を根拠にそんなことを……」
「わたくしは、殿下達が落ちていかれる様をつぶさに見ておりましたが……消えたのです」
「消え、た? 消えたとは、どういうことでございましょうか、ロメリア様」
准将とメルが再び顔を見合わせる。
ロメリアは崖の際に仁王立ちして腕組みをし、眼下を睨みつつ続けた。