この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

27話 情けは人の為ならず

 朝食をご馳走になった後、私達は予定通り出立することにした。
 目指すは当初からの目的地、総督府である。

「私が行方不明となってベルンハルト王国軍も動揺しているだろうが、ミットー公爵達なら予定通り総督府に向かうはずだ」

 ミケは、迷うことなくそう断言した。
 彼の部下達に対する深い信頼を目の当たりにし、私は感銘を受ける。
 そんな私の腕の中では、ネコが牙を剥き出して大欠伸をしていた。
 首の後ろにできた毛玉が気になってモミモミすると、胡乱な目で見上げられる。
 異世界へ転移する能力を失った事実からは立ち直ったネコだったが、少々機嫌がよろしくない。
 世話になった老夫婦は負の感情が少なかったため、ネコは昨日からほとんど食事がとれていないのだ。

『まったく、質素な生活に満足しおって。謙虚なじーさんばーさんじゃわい。あれしきの量じゃ、腹の足しにもならんわ』
「じゃあ、今までみたいにミケのを食べたらいいんじゃない?」
『いーやじゃ、気が進まん! よって、我は省エネモードに入る! 珠子は責任をもってこの母を抱っこしてゆけよ!』
「はいはい、仰せのままに」

 ミケは相変わらず払えば払うほど黒い綿毛の出る身だが、ネコは積極的にそれを食べようとはしなくなった。
 私の負の感情を食べないのと同じ理由だとすると、ネコは彼までファミリーに加えてしまったということになるが……。
 そんなミケは今、老婦人の夫と握手を交わしているところだった。
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