契約的関係ですよ、旦那さま!①~身代わりの結婚は、契約結婚のはずですが!?~
第1章
 たとえば。何の前触れもなく、いきなり「結婚しなさい」と言われたとて。

 「はいそうですか」と言って納得できる人間が何処にいるのだろうか。合わせ、それを告げられたのが二十代前半の、年頃の女性だったとして。簡単に納得して、受け入れられるわけがないのだ。

「……お祖父さま」

 私の目の前。テーブルに肘をついて、頭を抱えるお祖父さまを見て、私は小さくそう呟く。

 お祖父さまの目の前には、いわゆる手紙があった。花柄で華美な封筒。いかにも、美麗(みれい)ちゃんが好みそうなものだ。

「悪いが、これは否応なしに決まった。我が宝生(ほうしょう)家の本家の女児で、未婚なのはお前だけだ」

 ……それはまぁ、そうなのだけれど。

 かといって、本当に「はい、そうですか。わかりました」と答える元気は、私にはない。

 だって、私は本家の人間とはいえ、自由気ままに育ってきた人間だから。

「お前の父には、話は通してある。お前が了承したら、いいということだ」
「……そうですか」

 目を伏せる。

 だって、それしか言えないじゃないか。

 お父さまも了承しているのに、私一人のわがままでなんとかなるような問題じゃない。

< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop