店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
『カフェ・フォルコ』は、イヴの父が始めた店だ。
壁際に並んだビンの中には、三百年続くフォルコ家代々の当主が大陸中から集めてきたありとあらゆる種類のコーヒー豆が詰まっている。
かつては個人で楽しむか親しい者に請われて豆を譲るくらいだったが、イヴがまだ赤ん坊の頃に、父ロバート・フォルコがこうしてカウンターを設置してカフェにした。
ウィリアム王子もマンチカン伯爵も、そんな開店当初からの客である。
カフェとはいっても座席はなく、カウンターの脇に立ち飲み用の小さな机が一つ置かれているだけだ。
客は立ったままコーヒーを飲み、カップをカウンターに返して帰るのがルールになっている。
もちろんそれは、一国の王子殿下とて例外ではない。
「イヴ、私にはどういった豆で淹れてくれるんだ?」
「今回は、父が見つけた比較的新しい品種の豆にしようと思います。発見当初は樹高が高くて栽培が難しいと敬遠されましたが、昨今では柑橘系のさわやかな酸味とワインのような深みのある芳醇な味わいで注目されているそうですよ」
ウィリアムの〝いつもの〟は、ブラックコーヒーだ。
豆自体にこだわりはなく、季節やその日の温度などを考慮した上で彼が好む風味のものをイヴが選別している。
壁際に並んだビンの中には、三百年続くフォルコ家代々の当主が大陸中から集めてきたありとあらゆる種類のコーヒー豆が詰まっている。
かつては個人で楽しむか親しい者に請われて豆を譲るくらいだったが、イヴがまだ赤ん坊の頃に、父ロバート・フォルコがこうしてカウンターを設置してカフェにした。
ウィリアム王子もマンチカン伯爵も、そんな開店当初からの客である。
カフェとはいっても座席はなく、カウンターの脇に立ち飲み用の小さな机が一つ置かれているだけだ。
客は立ったままコーヒーを飲み、カップをカウンターに返して帰るのがルールになっている。
もちろんそれは、一国の王子殿下とて例外ではない。
「イヴ、私にはどういった豆で淹れてくれるんだ?」
「今回は、父が見つけた比較的新しい品種の豆にしようと思います。発見当初は樹高が高くて栽培が難しいと敬遠されましたが、昨今では柑橘系のさわやかな酸味とワインのような深みのある芳醇な味わいで注目されているそうですよ」
ウィリアムの〝いつもの〟は、ブラックコーヒーだ。
豆自体にこだわりはなく、季節やその日の温度などを考慮した上で彼が好む風味のものをイヴが選別している。