すずらんを添えて 幸せを
そして、そんなおじさんとは真逆なうちのお父さん。

ほんとに花嫁の父親ですか?というくらい、平然としている。

チャペルの扉の前で、私はお父さんの顔を見上げた。

「ケロッとしてるわね、お父さん。娘を嫁に出す寂しさとかはないの?」

「ん?だって、住むのは隣んちだろ?」

「それは、そうだけど…」

「それにお前、うっかり間違えて、うちに帰って来そうだしな。あはは!」

うぐっ、確かに。

「それにしたって、やっぱりしんみり感慨深くならないの?」

「いやー、嬉しくて仕方ないよ。嫁に行くのはお隣さんちで、相手は息子同然の尊くんだしな。蘭、お前、最高の親孝行者だぞ」

そう言って本当に嬉しそうに笑う。
なんだか拍子抜けするけれど、そんなに喜んでもらえるなら良しとしよう。

私はお父さんと腕を組み、改めてお礼を言った。

「お父さん、これまで育ててくれてありがとう。私、必ず尊と幸せになるね」

「ああ、こちらこそ。まっすぐ育ってくれてありがとう、蘭。鈴にばかり気を取られて、蘭には寂しい思いもさせたのに、優しい子になってくれて、父さんも母さんも感謝してるよ」

「お父さん…」

「幸せにな、蘭。大丈夫、尊くんとなら必ず幸せになれるよ」

「うん、ありがとう」
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