くの一反省帖2〜カステラが待ってる〜
仕方ないと言わんばかりに裏庭に出た十兵衛の前には憎き狭霧に化けた朧と見ず知らずの浪人者が対峙している。

「その方…いかなる理由があろうと女子と本気で斬り合うとは正気か?」

とりあえず形式的に尋ねると

「この娘子は目の前で人が殺されようが顔色一つ変えぬ肝の座り様…それほどの者は昨今の腑抜けた侍にすらおるまい…この狭霧とならば存分に斬り合いを楽しめると思うてのう」

十兵衛的には、スパッと真っ二つに斬り伏せて欲しいのだが、昨今の腑抜けた侍という男の台詞にカチンと来てしまった。
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