その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

44 もっと、満たして*

「っあぁ! んっ、んぁあっ」

「ティアナ、ティア」

「っダメっやぁ! んんっ! まって、まだっ!」

部屋に響く淫らな音と、2人の荒い息遣い。私の悲鳴に近い甘い嬌声と時折彼がうわごとのように私の名前を呼ぶ声。

何度も絶頂を迎えて、すでに立たなくなってきた腰を強引に引き寄せた彼が後ろから犯す


ビクリビクリと痙攣を繰り返し、背をのけぞらせイヤイヤと首を振ると、またしても大きな波が私の全身を貫く

「ぁあああっ! っーぁあっあっあ」

がくりと力が抜けてシーツの中に上半身を倒れ込ませて私はぐったりとベッドに身体を預ける。

「っはぁっ、お、願い、ちょっと休ませて」

倒れ込んだ私の汗ばんだ背中に、チュッチュと口付ける夫に懇願する。

「ん、すまない。ずっと早く君に触れたくてっ」

顔を上げた彼が汗に濡れた前髪をたくし上げて、微笑んだ。
その妖艶な微笑みに、私の中がまた彼を求めて蠢く。
当然それは、私の中に入ったままの彼にも伝わっているらしく、彼がフッと笑って、今度はゆっくりと抽送が始まる。


くちゅん、ぷちゅんといやにゆっくりと、聞かせるような音がいっそういやらしく感じて、ギュッとシーツを握る手に力が入る。


彼の手が私の背中をゆったりと撫でて、脇腹を通ると、そのまま胸を包む。


「んっあっ、ふぁ」

胸の頂を摘んでは、下から掬い上げて揉んで、形を味わうかのように触れるその手の与える刺激に、私の中がまたキュッキュと彼を締め上げるのがわかる。

「っ、ティアナっ」

堪らないと言うように呟いた彼の声。

私の名前を呼ぶ切ない声

それを聞いただけで、切ない気持ちなり、ほろりと涙が流れ落ちる。

「っふっん、ぁあっ! ら、ぁすっ」

答えるように彼の名前を呼べば、彼が苦しげにうめいて、中を満たしていた熱いものがズルリと引き抜かれる。

「っえっ!」

突然の喪失感に驚いて振り返ろうとした次の瞬間、私の身体は彼によってくるりと向きを変えられて、無防備な裸体を差し出すように仰向けに転がされた。

そして

「ぁっ、んんぅ!  っぁあっ」

一度喪失感を感じたそこを満たすように彼の熱い猛りが入ってくる。

全て奥まで収めた彼がゆったりと私の頬を撫でる。


「どうしたんだ?」

「?」


先程までの甘く欲を孕んだ視線とは少し違う、心配するようにこちらを見下ろす彼の瞳に意味が分からず首を傾ける。

彼の太くて硬い指が私の目の下をなぞって……涙を拭った。


「っ……ごめんなさい。なんでもないの」

何でもない時にあなたの愛称をサラリと呼べる、アドリーヌ嬢に嫉妬しただなんて、言えるわけもない。

そんな事を言ってしまったら、きっと彼を失望させる。

そこまで考えて、ぐっと唇を結んだ私を、彼は一瞬だけ眉を下げて見下ろして

唇をほぐすように撫でると、自分のものを重ねてきた。

「無理していないか?」

唇が離れて、互いの息使いがわかるほどに近い場所で彼が問うてくるから、私は慌てて首を横に振って、両手を彼の首に回す。


私にしては積極的な行動に、彼の瞳が見開かれる。

「お願い、もっと抱いて」

自分らしからぬ言葉が出てきたことに自分でも驚いた。
当然、彼も驚いたように私を見下ろしていて……

「どうしたんだ?」

「っ、私も触れたくて堪らなかったから……お願い、抱いてめちゃくちゃにして、寂しかったの」

こんな甘えた女の言葉、彼に呆れられてしまわないだろうか? と不安が襲うけれど、それでも何故か歯止めが効かなかった。

ポロリともう一粒涙が頬を伝ったのが分かったけれど、やはりそれは彼の手にすくいとられたらしい。

彼の漆黒の瞳が動揺したように揺れて、あぁ困らせてしまったかしらと、思いのままを口にした事を後悔した時。

「っなんで君はそうっ……」

彼が小さな声で低くうめいた次の瞬間。

「っぁああっ‼︎」

ばちゅんと激しい水音と共に私は悲鳴を上げる。

奥からゾクゾクとした痺れが一気に身体を駆け上って、ひくんと身体が反応するけれど、彼はそんな私をきつく抱きしめると、激しく腰を打ちつけてくる。

どこにも隙間がないほどにピッタリと密着した互いの汗ばんだ身体が熱い。でも、ずっとこうしていたいとすら思ってしまう。

せめて、今日だけ、この瞬間だけでも彼を独り占めしていたい。
たとえ他の人と彼が思い合っていたとしても、これが彼にとって義務の行為であっても。


「っ、お願い、もっと! もっと!」

うわごとのように泣きながら縋る私を彼はどう思っただろう。ただ彼は答えるように、私が眠ってしまうまで抱き続けてくれた。

激しく力強く。


そして

「愛してるティアナ、そばにいるから」

意識を手放す直前、都合のいい言葉を彼が囁いてくれたような気がしたけれど、それはきっと夢の中での出来事だ。

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