あなたに夢中
一日の業務が終わり帰宅する準備を整えていると、デスクの上に資料が入ったファイルが置かれる。

「堀田さん。部長から明日の朝一で使う資料の作成を頼まれていたんだけど、私、用事があって残業できないの。代わりにお願いできる?」

同僚の坂本さんが口角をニコリと上げて微笑む。
ふたつ年上の彼女から急に仕事を頼まれるのは、今回が初めてのことじゃない。残業確定の業務を押しつけてくるのは、私を困らせるためだとわかっている。
昼間の陰口といい、わかりやすい嫌がらせにあきれてしまう。

「はい。わかりました」
「じゃあ、お先に」
「お疲れさまです」

軽い足取りで退社する彼女に対して思うことはあるけれど、不満を言ってもめるのは面倒くさい。
どうせこの後の予定はなにもないし、残業すればライブグッズ代の足しになるからヨシとしよう。
気持ちを切り替え、資料の作成に取りかかった。
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