あなたに夢中

甘い誘い

週五日の勤務を終えて迎えた週末。
ライブまで約二カ月あるのに逸る気持ちを抑え切れず、着て行く服を買うために渋谷に繰り出す。
普段は無難な黒や白、グレーなどの色の服を選びがち。でもライブでは推しのメンバーカラーである赤を取り入れたい。
そんなこと考えつつ歩を進めていると、あるハイブランドショップのショーウインドーにディスプレイされたネックレスが目に留まった。
ハートモチーフのルビーのネックレスが、照明の光を受けてキラキラと輝いている。
「かわいい」とつぶやき、食い入るようにショーウインドーを覗き込む。しかしそれも束の間、すぐに口からため息が漏れる。
地味な私に、高価なジュエリーは似合わない。
そもそも今日はライブに着て行く服を選びにきたのであって、ネックレスに見惚れている場合じゃないと思い直し、その場から立ち去ろうしたそのとき……。

「あれ? 堀田さん?」

聞き覚えのある声が耳に届き、弾かれるように顔を上げる。すると目の前に同じ部署で働く渡辺優輝(わたなべゆうき)の姿があった。
ツーブロックの黒髪と目鼻立ちがハッキリしたイケメンの彼は、身長百六十三センチの私が見上げるほど背が高く、脚の長さが強調される黒の細身のパンツルックがとても似合っている。
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