此方は十六夜の蝶。
『…なんで?嬉しくねーのかよ。だってお前いつも見てただろ、この着物』
『オレはウルが喜んでくれると思ったから……!!』
この着物と、鷹が渡してくれた着物。
いったいなにが違うんだろう。
鷹にとっては、ああいった形だとしても私のために必死に手に入れてくれたものだ。
あれを受け取らないのなら、いま差し出された着物を受け取る資格も私にはない。
「ウル…?どうかした?」
「…ごめんなさい。いりません」
「…気に入らなかったかい」
「そうじゃないです。…すみません、私には……勿体ないんです」
帰ろう。
具合だって良くなったし、ご飯まで頂いてしまった。
いそいそと準備をし出す私を止めるかのように、彼は穏やかに言ってくる。
「なにか嫌なことでも思い出させてしまったかな」
「…ごめんなさい。私は…、いまの着物があれば十分なんです」
「……そういう子を見ると、昔からどうにも可愛がってあげたい主義みたいなんだ俺」