身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
定時間際に依頼された仕事を片付けるのに手間取ってしまった。
結乃は会社の裏に早足で向かう。
(まずい、約束の時間ギリギリになっちゃった)
ビルの外に出ると、こちらに向かって歩いて来る耀の姿が見えた。パーキングに車を停め、結乃を迎えに出てくれたらしい。
彼の為に仕立てられた高級スーツをきっちり着こなした姿に今更ながら目を奪われる。
八歳年上の大人の男性で、大会社の御曹司。
(……いまだに私があの人の〝奥さん〟だってことが信じられない)
急いでいたのも忘れて思わず足が止まっていた。
耀は結乃に気付いようでこちらにやってくる。結乃も慌てて駆け寄った。
「お待たせしてすみませ――わっ!」
「っ、結乃、あぶない!」
結乃のすぐ横を自転車が速いスピードで駆け抜けていく。すんでの所で避けれたものの、身をよじった拍子に横にふらついてしまった。
転ぶ、と体に力を入れた瞬間、グイッと強引に腰を引かれ上半身が温かいもので包まれる。
結乃は耀の逞しい腕に抱き止められていた。
「……危ないな。ちゃんと周りを見ろ。ぶつかるところだったぞ」
耳のすぐ近くで耀の安堵の溜息が聞こえた。
「す、すみません……」