続・泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた2

11話 前編

 店仕舞いを終えて、私たちは凛ちゃんの車で帰宅した。
 帰りの道中、凛ちゃんはずっと暗い顔をして黙っていた。
 その顔は、怒っているような、そして落ち込んでいるような表情に見える。
 
 凛ちゃんは、どこから大貴くんの話を聞いていたのだろうか。
「身体目当てだ」というところ?それとも、「縁を切れ」と言われたところから?



 自宅に着いて、リビングに入ると、私は凛ちゃんの腕を掴んだ。
 凛ちゃんは「どうした?」と訊きながら振り返って、私を見下ろす。
 苦しそうな顔で私を見つめる凛ちゃんに対して、私は「慰めてあげたい」という気持ちになった。
 いや、むしろ「慰めてあげたい」というのは建前だ。本当は、私のほうが凛ちゃんに「慰めてほしい」と思っている。
 
 私は凛ちゃんのジャケットの襟を掴んで、下に引っ張る。
 すると、彼はゆっくりと腰を曲げた。
 そして、私は少し背伸びをしながら、凛ちゃんに口付けた。

 初めは触れるだけの口付けだったが、徐々に啄むようなキスへと変え、私は彼の唇に舌をねじ込もうとする。すると、凛ちゃんはゆっくりと私を受け入れてくれた。
 私から舌を絡めたことは今まで一度もなかったため、少しぎこちない。その一方で凛ちゃんは、私に応じるだけで、自分から舌を絡めようとはしない。
 
 唇を離すと、私は凛ちゃんの手を引いて、寝室へと向かう。
 私は凛ちゃんをベッドに押し倒すと、彼の上に(またが)った。
 彼は物憂げな表情で、ジッと私の顔を見つめてくる。

 私はいつも凛ちゃんがしてくれるように、彼の頬や首筋に舌を這わせる。
 それと同時に、シャツのボタンを一つずつ外していき、上半身をはだけさせた。すると、胸元の入れ墨が露わになる。
 私は入れ墨の龍の顔を指先でなぞりながら、胸の突起をチロチロと舌先で舐める。
「んっ……」
 凛ちゃんは少し身体を震わせると、甘い吐息を漏らす。
 その反応を見て、私の愛撫で彼が気持ち良くなってくれているのだと分かり、私は嬉しくなった。
 
 私はもっと凛ちゃんの反応が見たくなり、胸の先を何度も舌で弾いたり、指先で転がしたりする。
 すると、私の腹部に当たっている凛ちゃんの性器が、少しずつ固くなっているのが分かった。
 私は凛ちゃんの割れた腹筋をなぞるように舌を這わせ、徐々に下へと移動し、彼の股の間に潜り込んだ。

 私は凛ちゃんのベルトに手を掛ける。すると、彼は突然私の手を掴んで「やめろ」と言い放った。
 私が驚いて顔を上げると、彼は悲しそうな顔で私のことを見つめていた。
「頼むから、俺の機嫌を取るために、自分の身体を差し出すようなことはしないでくれ」
「えっ……」
「俺は……、お前の身体目当てで、お前と一緒にいるわけじゃない……」
 凛ちゃんは苦しそうに声を震わせる。
 彼の言葉を聞いた瞬間、私は「ああ、やっぱり」と思った。
 やはり、凛ちゃんは大貴くんの「身体目当てだ」という言葉を気にしていたようだ。

「分かってる。分かってるよ、そんなこと」
 私は真っ直ぐ凛ちゃんの目を見る。
「凛ちゃんが私のことを愛してくれてるのは、ちゃんと分かってるから」
 私は凛ちゃんに、そして自分に言い聞かせるように続ける。
「これは、凛ちゃんの機嫌を取るつもりでやってることじゃない。ただ、私がしたいだけなの。……凛ちゃんに触れたいし、触れてほしい。私だって、あなたのことを求めてるの」
 私たちは頻繁に身体を重ねているが、それはただ凛ちゃんが一方的に欲望をぶつけているわけじゃない。私はそれを分かっている。
 私はいつも、凛ちゃんに優しく触れられている時、彼に愛されているのだと実感できた。
 
 そして今、私は凛ちゃんの温もりが欲しい。大貴くんに否定されてしまった私たちの愛を、今確かめ合いたい。

「私は……凛ちゃんが欲しい。抱いてほしいの。……ダメ?」
 私がそう問いかけると、凛ちゃんの強張っていた顔が少しずつ(ほぐ)れていく。
「……ダメじゃねぇよ」
 凛ちゃんはそう言うと、掴んでいた手を放した。

 私はベルトを外し、ズボンと下着を順に下ろす。すると、軽く勃ち上がっている凛ちゃんの性器が顔を出した。
 雄の匂いを漂わせているソレを、私は口に含んだ。
 凛ちゃんのモノは大きくて、喉まで使っても三分の二程度しか入らないので、根元は軽く手で扱く。
 そして、凛ちゃんは「無理するなよ」と言って、私の頭を優しく撫でてくれた。
「んっ、あ……」
 私が頭を上下させたり、舌を絡めたりするたびに、凛ちゃんは身体を震わせる。
 その反応が可愛くて、私はもっと見たいと思い、奥まで咥え込んだ。

 凛ちゃんのモノが完全に隆起すると、私は口を離して、いそいそと服を脱いだ。そして、再び彼の上に跨る。
 口で奉仕している間、早くナカにほしくて仕方なかった。
 ゆっくりと腰を落としていくと、待ち侘びていた甘い快感が、下腹部から広がっていく。
「あっ、あぁ……」
 全身に広がっていく快楽に、私は身体を仰け反らせる。
 凛ちゃんは熱を帯びた瞳をこちらに向けながら、そっと私の腰に手を添えてくれた。

 私は膝を立てて、身体をゆっくりと上下させる。
 腰を下ろすたびに、凛ちゃんのモノが深く突き刺さって、身体がビクビクと震えた。
 そんな私をジッと見上げてくる凛ちゃんの視線がむず痒い。
 
 頑張って凛ちゃんのことを気持ち良くさせたいが、身体が震えてしまって、思うように動けない。
「辛いか?」
 凛ちゃんは様子を窺うように問いかける。
「……っ、つらい。りんちゃん、うごいて……」
 私は声を震わせながら強請った。

 すると、凛ちゃんはガバッと勢いよく起き上がると、下から思いっきり突き上げた。
 私はその瞬間、目の前が白く点滅した。
「幸希、愛してる……」
 凛ちゃんは私を抱きしめながら、耳元で囁く。
 その言葉を聞いた瞬間、自分の心臓がバクバクとうるさくなり、先ほどよりも身体が熱くなった。
 何度も言われた言葉だけれど、やはり何度聞いても新鮮な喜びを感じる。
 
「お前は、俺のものだ……。誰にも渡さない」
 荒い吐息を漏らしながら、凛ちゃんは私をきつく抱きしめる。私も彼の首に手を回して、縋りついた。

 離れたくない。このまま凛ちゃんと一つに溶け合ってしまいたい。
 
「俺だってそうだ。俺も、お前だけのものだ。お前以外にこんな……、こんな気持ちになったりしない」
「あぁっ、りんちゃ……」
 私は奥を突き上げられるたびに、何度も軽く達してしまう。

「幸希……、『好き』って言ってくれ」
「ん、ぇ……?」
「『凛ちゃん、好き。愛してる』って言ってくれ」
 凛ちゃんは余裕の無さそうな声で、懇願するように囁く。
「り、りんちゃん、すき……。あい、してる……」
「……っ、もっと、言ってくれ」
 凛ちゃんの声と息遣いから、先ほどよりも興奮しているのが伝わってくる。
「りんちゃ……、すきぃ、だいすき……」
「俺も好きだよ、幸希……」
 凛ちゃんは私の胸元に唇を押し当てると、思いっきり肌を吸い上げた。
 そんな乱暴な行為すら、今の私は愛おしいと感じてしまう。

 私は何度も凛ちゃんに「好き」とうわ言のように繰り返した。
 そのたびに、凛ちゃんは(たかぶ)り、腰の動きの激しさが増していく。
「だめ……、イっちゃう……」
 何度も奥を貫かれて、私はもう限界が近かった。
「俺も、イきそうだ……。一緒にイこう……」
 凛ちゃんはそう言って私の唇を貪り、私はそれに応えるように彼の甘い吐息を飲み込む。
 すると、彼は激しく私と舌を絡め合いながら、絶頂に向けて私の身体を激しく揺さぶった。
 
 そして、腹の奥に彼の欲望が放たれた瞬間、私は髪を振り乱しながら達した。
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