氷の王子様は子守り男子

一番になって

 生徒の家族が応援をしている、保護者用テント。
 そこに私たちがやって来ると、真っ先に気づいたのは、たっくんと日向ちゃんだった。

「あっ、知世お姉ちゃんだ!」
「お兄ちゃーん!」

 相変わらず可愛い。相変わらず天使。
 飛び跳ねて迎えてくれたたっくんの頭を、思い切りなでる。
 家族の前では、吉野くんとのあれこれは顔に出さないようにしなきゃ。
 なんて思ってたけど、たっくんや日向ちゃんの可愛さパワーのおかげで、十分気は紛れそう。
 吉野くんも、日向ちゃんを嬉しそうに抱っこしていた。
 って言うか、この二人がそろって応援してくれるなんて、最高なんだけど。

「ねえ、お姉ちゃん。たっくんと日向ちゃんが応援してるところ、しっかり写真に撮っておいて」
「いやいや、写真撮るならあなた達の方でしょ」
「そんなのよりもたっくんと日向ちゃんだよ。絶対だからね!」

 私の写真をとられるより、そっちの方が百倍パワーが出るよ。

「それよりあなた達、出るのはどの競技だっけ?」

 そういえば、しっかりとは話していなかったっけ。
 私たちが出る競技は、そんなに多くない。実行委員で忙しいから、その分出る競技は少なくしていた。

「この、全校生徒によるダンスでしょ。それから私は騎馬戦に出るけど、上に乗るんじゃなくて馬なんだよね」

 どれもこれも、目立たないどころか、もしかすると見つけられずに終わるかも。
 これじゃ、応援し甲斐がなさそう。

「あっ。でも、実行委員対抗リレーがあるか」

 実行委員の人たちが、それぞれの組に分かれての対抗リレー。
 ただでさえ忙しいのにそんなことしなきゃならないってことで、実行委員の人たちからはなかなか評判の悪い競技だけど、これなら目立つし、応援も盛り上がるかも。

「おぉっ、いいね。たっくん、日向ちゃん、聞いた? 二人とも、リレーに出るんだって」
「リレー?」
「そう。かけっこして、次に走る人にバトンを渡していくやつ」

 お姉ちゃんから話を聞いて、たっくんや日向ちゃんも、ワクワクしてきたみたい。

「すごーい!」
「一番になってね!」

 えっ、一番? それは、できるかな?
 私は運動オンチってわけじゃないけど、特別得意ってわけでもない。一番は難しいかも。

 だけど、たっくんと日向ちゃんが、キラキラした目で見つめてくる。

「知世お姉ちゃん、頑張って!」
「たくさん応援するね!」

 純粋な眼差しが眩しい!
 これは、とても無理なんて言えない。

「う、うん。頑張るから、応援よろしくね」

 そして約束したのは、私だけじゃない。吉野くんもだ。

「わかった、一番だな。まかせとけ」
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