嫁いでから一度も触れてこなかった竜人皇帝が、急に溺愛してくる理由
* * * * *
「……やはり、何かおかしい」
ウィルフレッドの言葉にデイルが首を傾げた。
「何かって何が?」
「アイシャのことだ。彼女付きになった侍女やメイドが口を揃えて『皇后様は王国から連れてきた侍女の顔色を窺っている』と報告している。普通は逆だろう?」
使用人の侍女が主人のアイシャの顔色を窺い、機嫌を損ねないよう気を配るならともかく、主人であるアイシャが侍女を気にするというのはおかしな話である。
デイルも眉根を寄せている。
「厳しい侍女なんじゃないか? たとえば元は家庭教師だったとか。そういうことも珍しくないって聞くしな」
「そうだとしても、やはり使用人にそこまで気を遣うのは変だ。その侍女に関しては他にもいくつか不審な話を耳にした」
アイシャ付きの侍女やメイド達からは定期的に報告を受けているが、特に侍女からの報告には疑問点が多い。
まず、王国から来た侍女は仕事があまり出来なかった。身支度の手伝いも遅く、やや雑で、侍女の仕事の内容がそれほど身についてないように感じられるらしい。
次に、侍女が管理するはずの宝飾品がいくつか足りないという。
ウィルフレッドが先日手配し、アイシャのために購入した宝飾品が聞いていたよりも数が少なく、目録にあるはずのものがない。
そして、アイシャが侍女の顔色を窺っている。
「この侍女、本当はアイシャ付きの侍女ではないんじゃないか? 常にそばにいるが、主人を心配してというより、監視している気がする」
……だが、何故アイシャに監視をつける?
「それもおかしくないか? 何でお姫さんに監視が必要なんだ? 護衛なら分かるけどさ」
「何か知られたくないことがあるのか、アイシャ自身に秘密があるのか。……デイル、【アイシャ・リエラ・ウィールライト】について情報を集めてきてくれ」
勝手に調べたと知られたら嫌がられるかもしれないが、どうにも違和感が拭えない。直感が探れと告げている。
デイルが頭を掻きながら立ち上がった。
「まあ、ウィルがそう言うなら調べてくるけど。本人に……って、もし侍女が監視役だというなら、お姫さんからは聞けないか」
「そういうことだ」
王国が、アイシャが何を隠しているのか。
もしかしたら、アイシャが自信なさげに俯く理由が分かるかもしれない。それがどんな内容であれ、ウィルフレッドは責めるつもりはないし、出来るならば、彼女の苦しみを取り除きたいと思った。
そうしたら、アイシャは笑顔を見せてくれるだろうか。
薬草について話していた時の、青い瞳の輝きは美しかった。あの輝きをまた見たい。もっと、ウィルフレッドを見てほしい。
……次に会った時、謝らなければ。
最初に『期待しない』『愛さない』などと言ってアイシャを傷付けてしまったのだ。きちんと気持ちを伝えなければアイシャの気持ちがこちらを向くことはないだろう。
デイルに調査を任せている間に、ウィルフレッドはアイシャと会う時間を増やすことにした。
手紙を出して予定を取りつけ、アイシャの部屋に行く。
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「ああ、そういう堅い挨拶はしなくていい」
また薬草園に行こうと手紙に書いておいたからか、動きやすそうな装飾の少ないドレス姿だったが、それでもアイシャを美しいと思った。あえて言うなら、綺麗な銀髪がボンネットで隠れてしまっているのが少し残念だ。それにボンネットをつけると俯きがちなアイシャは顔が見えない。
……それについては今度侍女に言っておくか。
今日の侍女は帝国の者だった。
「では、薬草園に行くとしよう」
「……はい、陛下」
以前と同じく、部屋を出て、出来るだけゆっくりと歩く。
いつもの速さで歩くとアイシャには速すぎるようなので、後ろをついてくるアイシャの足音と気配に気を付けながら薬草園へと向かう。
手紙の返事と共に送られてきた本をウィルフレッドは読んだ。
……記憶力には自信がある。
少なくとも、前回アイシャが教えてくれた、肉料理に合う薬草については名前も特徴も覚えた。見分けられるかはまだ微妙ではあるけれど、それでも、忘れるよりはいいだろう。
城の外へ出て、敷地を歩き、薬草園に着く。
「っと……」
薬草園の門のそばの石が少し浮き上がっていた。
「アイシャ、足元に気を付けろ」
つい手を差し出したが、戸惑うアイシャを見て、こういうことは好まないのではと遅ればせながら気付く。
しかし、引こうとした手に、アイシャの手袋をつけた手がそっと重ねられた。強く握ったら折れてしまいそうなほど細い手を緩く握ると、控えめに握り返される。
アイシャが浮き上がった石の上を越える。
「ありがとうございます、陛下」
「っ、ああ……後で直すよう伝えておこう」
するりとアイシャの手が離れていく。
そうして、アイシャが薬草園の中を見回した。
「好きに見て回るといい。前回の薬草は覚えたが、俺は他の薬草を知らないから、君の後についていこう」
「……前回の薬草を覚えていらっしゃるのですか?」
「肉料理に少量使ったら美味かった」
そう答えると、アイシャが俯く。
顔は見えなかったが、聞こえた声は柔らかかった。
「経験と共に覚えるのは、いいことですね」
その表情を見たかったが、覗き込むのは控えた。
アイシャが歩き出し、薬草を眺める。
その手が手袋を外し、薬草を摘む。
「これは見覚えがないな」
アイシャの手元を覗き込むと、頷き返された。
「こちらはティニムリッパーといいます。爽やかな香りがする薬草で、王国ではデザートなどに飾りや香りづけに少しだけ添えることもあります」
それから、アイシャが見覚えのある薬草を摘んだ。
「それはラムソルだな?」
「はい……ティニムリッパーとラムソルを乾燥させたものを小さな袋に入れて持ち歩くと、虫よけに効果があるのです」
「虫よけか。それは大事だな」
夏場に虫に刺されると痒くなるから嫌だ。人間に比べれば竜人のほうが虫に刺されてもマシらしいのだが、それでも痒いものは痒いし、集中力が切れるので仕事に差し障る。
「もうすぐ夏になるので、陛下の分もお作りしま──……」
顔を上げたアイシャと至近距離で目が合った。
薬草に夢中になり、思いの外、近づいてしまっていたようだ。
アイシャがパッと俯き、ウィルフレッドも慌てて体を起こし、距離を取る。
「……よければ、俺の分も虫よけを作ってくれるか?」
「……はい、かしこまりました……」
顔が見えなくても、アイシャが照れていることが分かる。
……多分、俺も今は顔が赤いだろう。
何となく互いに顔を合わせづらい。
「その、薬草だが、よく眠れるようにしてくれるものなどはないか? 最近、仕事が遅くまで続いて少し寝つきが悪くてな」
小さく咳払いをし、話題を変えると、アイシャも立ち上がった。
その表情はもういつもの無表情に近いものに戻っていた。
アイシャがキョロキョロと辺りを見回す。
「それでしたら──……あ、ありました」
歩き出したアイシャについていく。アイシャが縦に紫色のもこもことしたものがついた植物を手に取った。随分と香りが強くて不思議な形の植物である。
「こちらのラドネーヴァーを乾燥させて、小袋に詰めたものを枕元に置いておくと寝つきがよくなります。王国で、わたしもよく作って使っておりました。……虫よけと一緒にお作りしましょうか?」
「ああ、是非頼む。……アイシャ」
名前を呼べば、アイシャが振り返る。
「……最初に会った時、君に酷い言葉をかけたことを、ずっと謝罪したかった。すまなかった。俺は君を傷付けた」
頭を下げ、謝罪する。
それは竜人族にとっては非常に重要なことだった。
誇り高いドラゴンの血を受け継ぐ竜人族は、自分よりも力の弱い者には決して頭を下げることがない。頭を下げるということは、相手のほうが上だという証である。
だが、ひとつだけ例外もあった。
相手が『番』ならば、竜人は喜んで頭を下げる。
普通であれば屈辱的なことも『番』が望むのであれば、何の抵抗もなく行える。それを聞いた時は冗談かと思っていたけれど、今、ウィルフレッドは身をもって実感していた。
他の誰かに頭を下げるなど死んでも嫌だが、アイシャに対しては素直に頭を下げられるし、望むなら何度でもしよう。
……罵倒されたとしても仕方がない。
我ながら、自分勝手で厚かましいと思う。一方的に言っておきながら、後から許してもらおうなんて、あまりにも都合のいいことを言っているという自覚はあった。
「へ、陛下、おやめください……!」
アイシャの慌てたような声がする。
「しかし、俺はあの時、最低の発言をした」
「そのようなことは……」
「誤魔化さなくていい。正直に言ってくれ」
罵倒されても、怒鳴られても、気持ちをぶつけてもらえるならいいほうだ。何も言わずに距離を置かれると、もうどうしようもなくなってしまう。
「……顔を上げてください」
アイシャの言葉に従い、そろりと顔を上げる。
視線が合った青い瞳は微かに潤んでいるように見えた。
「…………確かに、陛下のお言葉はつらかったです。でも、いいのです。こうして謝罪をいただけただけで、十分です」
一瞬、突き放されているのかと思ったが、アイシャがほのかに微笑んだことから、そうではないと理解出来た。本当に、とても淡い笑みだったが、それでも、笑ってくれたことに驚いた。一拍遅れて喜びがあふれてくる。
こんな状況ではあったが、アイシャの笑みを見られた。
「俺は、君に嫌われていないだろうか……?」
そっと訊ねれば小さく頷き返される。
それだけで、今は十分だった。
「……やはり、何かおかしい」
ウィルフレッドの言葉にデイルが首を傾げた。
「何かって何が?」
「アイシャのことだ。彼女付きになった侍女やメイドが口を揃えて『皇后様は王国から連れてきた侍女の顔色を窺っている』と報告している。普通は逆だろう?」
使用人の侍女が主人のアイシャの顔色を窺い、機嫌を損ねないよう気を配るならともかく、主人であるアイシャが侍女を気にするというのはおかしな話である。
デイルも眉根を寄せている。
「厳しい侍女なんじゃないか? たとえば元は家庭教師だったとか。そういうことも珍しくないって聞くしな」
「そうだとしても、やはり使用人にそこまで気を遣うのは変だ。その侍女に関しては他にもいくつか不審な話を耳にした」
アイシャ付きの侍女やメイド達からは定期的に報告を受けているが、特に侍女からの報告には疑問点が多い。
まず、王国から来た侍女は仕事があまり出来なかった。身支度の手伝いも遅く、やや雑で、侍女の仕事の内容がそれほど身についてないように感じられるらしい。
次に、侍女が管理するはずの宝飾品がいくつか足りないという。
ウィルフレッドが先日手配し、アイシャのために購入した宝飾品が聞いていたよりも数が少なく、目録にあるはずのものがない。
そして、アイシャが侍女の顔色を窺っている。
「この侍女、本当はアイシャ付きの侍女ではないんじゃないか? 常にそばにいるが、主人を心配してというより、監視している気がする」
……だが、何故アイシャに監視をつける?
「それもおかしくないか? 何でお姫さんに監視が必要なんだ? 護衛なら分かるけどさ」
「何か知られたくないことがあるのか、アイシャ自身に秘密があるのか。……デイル、【アイシャ・リエラ・ウィールライト】について情報を集めてきてくれ」
勝手に調べたと知られたら嫌がられるかもしれないが、どうにも違和感が拭えない。直感が探れと告げている。
デイルが頭を掻きながら立ち上がった。
「まあ、ウィルがそう言うなら調べてくるけど。本人に……って、もし侍女が監視役だというなら、お姫さんからは聞けないか」
「そういうことだ」
王国が、アイシャが何を隠しているのか。
もしかしたら、アイシャが自信なさげに俯く理由が分かるかもしれない。それがどんな内容であれ、ウィルフレッドは責めるつもりはないし、出来るならば、彼女の苦しみを取り除きたいと思った。
そうしたら、アイシャは笑顔を見せてくれるだろうか。
薬草について話していた時の、青い瞳の輝きは美しかった。あの輝きをまた見たい。もっと、ウィルフレッドを見てほしい。
……次に会った時、謝らなければ。
最初に『期待しない』『愛さない』などと言ってアイシャを傷付けてしまったのだ。きちんと気持ちを伝えなければアイシャの気持ちがこちらを向くことはないだろう。
デイルに調査を任せている間に、ウィルフレッドはアイシャと会う時間を増やすことにした。
手紙を出して予定を取りつけ、アイシャの部屋に行く。
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「ああ、そういう堅い挨拶はしなくていい」
また薬草園に行こうと手紙に書いておいたからか、動きやすそうな装飾の少ないドレス姿だったが、それでもアイシャを美しいと思った。あえて言うなら、綺麗な銀髪がボンネットで隠れてしまっているのが少し残念だ。それにボンネットをつけると俯きがちなアイシャは顔が見えない。
……それについては今度侍女に言っておくか。
今日の侍女は帝国の者だった。
「では、薬草園に行くとしよう」
「……はい、陛下」
以前と同じく、部屋を出て、出来るだけゆっくりと歩く。
いつもの速さで歩くとアイシャには速すぎるようなので、後ろをついてくるアイシャの足音と気配に気を付けながら薬草園へと向かう。
手紙の返事と共に送られてきた本をウィルフレッドは読んだ。
……記憶力には自信がある。
少なくとも、前回アイシャが教えてくれた、肉料理に合う薬草については名前も特徴も覚えた。見分けられるかはまだ微妙ではあるけれど、それでも、忘れるよりはいいだろう。
城の外へ出て、敷地を歩き、薬草園に着く。
「っと……」
薬草園の門のそばの石が少し浮き上がっていた。
「アイシャ、足元に気を付けろ」
つい手を差し出したが、戸惑うアイシャを見て、こういうことは好まないのではと遅ればせながら気付く。
しかし、引こうとした手に、アイシャの手袋をつけた手がそっと重ねられた。強く握ったら折れてしまいそうなほど細い手を緩く握ると、控えめに握り返される。
アイシャが浮き上がった石の上を越える。
「ありがとうございます、陛下」
「っ、ああ……後で直すよう伝えておこう」
するりとアイシャの手が離れていく。
そうして、アイシャが薬草園の中を見回した。
「好きに見て回るといい。前回の薬草は覚えたが、俺は他の薬草を知らないから、君の後についていこう」
「……前回の薬草を覚えていらっしゃるのですか?」
「肉料理に少量使ったら美味かった」
そう答えると、アイシャが俯く。
顔は見えなかったが、聞こえた声は柔らかかった。
「経験と共に覚えるのは、いいことですね」
その表情を見たかったが、覗き込むのは控えた。
アイシャが歩き出し、薬草を眺める。
その手が手袋を外し、薬草を摘む。
「これは見覚えがないな」
アイシャの手元を覗き込むと、頷き返された。
「こちらはティニムリッパーといいます。爽やかな香りがする薬草で、王国ではデザートなどに飾りや香りづけに少しだけ添えることもあります」
それから、アイシャが見覚えのある薬草を摘んだ。
「それはラムソルだな?」
「はい……ティニムリッパーとラムソルを乾燥させたものを小さな袋に入れて持ち歩くと、虫よけに効果があるのです」
「虫よけか。それは大事だな」
夏場に虫に刺されると痒くなるから嫌だ。人間に比べれば竜人のほうが虫に刺されてもマシらしいのだが、それでも痒いものは痒いし、集中力が切れるので仕事に差し障る。
「もうすぐ夏になるので、陛下の分もお作りしま──……」
顔を上げたアイシャと至近距離で目が合った。
薬草に夢中になり、思いの外、近づいてしまっていたようだ。
アイシャがパッと俯き、ウィルフレッドも慌てて体を起こし、距離を取る。
「……よければ、俺の分も虫よけを作ってくれるか?」
「……はい、かしこまりました……」
顔が見えなくても、アイシャが照れていることが分かる。
……多分、俺も今は顔が赤いだろう。
何となく互いに顔を合わせづらい。
「その、薬草だが、よく眠れるようにしてくれるものなどはないか? 最近、仕事が遅くまで続いて少し寝つきが悪くてな」
小さく咳払いをし、話題を変えると、アイシャも立ち上がった。
その表情はもういつもの無表情に近いものに戻っていた。
アイシャがキョロキョロと辺りを見回す。
「それでしたら──……あ、ありました」
歩き出したアイシャについていく。アイシャが縦に紫色のもこもことしたものがついた植物を手に取った。随分と香りが強くて不思議な形の植物である。
「こちらのラドネーヴァーを乾燥させて、小袋に詰めたものを枕元に置いておくと寝つきがよくなります。王国で、わたしもよく作って使っておりました。……虫よけと一緒にお作りしましょうか?」
「ああ、是非頼む。……アイシャ」
名前を呼べば、アイシャが振り返る。
「……最初に会った時、君に酷い言葉をかけたことを、ずっと謝罪したかった。すまなかった。俺は君を傷付けた」
頭を下げ、謝罪する。
それは竜人族にとっては非常に重要なことだった。
誇り高いドラゴンの血を受け継ぐ竜人族は、自分よりも力の弱い者には決して頭を下げることがない。頭を下げるということは、相手のほうが上だという証である。
だが、ひとつだけ例外もあった。
相手が『番』ならば、竜人は喜んで頭を下げる。
普通であれば屈辱的なことも『番』が望むのであれば、何の抵抗もなく行える。それを聞いた時は冗談かと思っていたけれど、今、ウィルフレッドは身をもって実感していた。
他の誰かに頭を下げるなど死んでも嫌だが、アイシャに対しては素直に頭を下げられるし、望むなら何度でもしよう。
……罵倒されたとしても仕方がない。
我ながら、自分勝手で厚かましいと思う。一方的に言っておきながら、後から許してもらおうなんて、あまりにも都合のいいことを言っているという自覚はあった。
「へ、陛下、おやめください……!」
アイシャの慌てたような声がする。
「しかし、俺はあの時、最低の発言をした」
「そのようなことは……」
「誤魔化さなくていい。正直に言ってくれ」
罵倒されても、怒鳴られても、気持ちをぶつけてもらえるならいいほうだ。何も言わずに距離を置かれると、もうどうしようもなくなってしまう。
「……顔を上げてください」
アイシャの言葉に従い、そろりと顔を上げる。
視線が合った青い瞳は微かに潤んでいるように見えた。
「…………確かに、陛下のお言葉はつらかったです。でも、いいのです。こうして謝罪をいただけただけで、十分です」
一瞬、突き放されているのかと思ったが、アイシャがほのかに微笑んだことから、そうではないと理解出来た。本当に、とても淡い笑みだったが、それでも、笑ってくれたことに驚いた。一拍遅れて喜びがあふれてくる。
こんな状況ではあったが、アイシャの笑みを見られた。
「俺は、君に嫌われていないだろうか……?」
そっと訊ねれば小さく頷き返される。
それだけで、今は十分だった。