嫁いでから一度も触れてこなかった竜人皇帝が、急に溺愛してくる理由
* * * * *
シャロン・オロークは苛立っていた。
ウィールライト王国の第二王女付きだったというのに、監視役として、第一王女付きに回された挙句、帝国にたったひとりでついてくることになってしまった。
……損な役を押し付けられてしまったわ。
元第一王女の監視役は思っていた以上に大変である。
どうせ帝国でもこの元王女は放置されるだろうから、適当に自分のことは自分でさせようと考えていたのに、どういうわけか皇帝が元第一王女に関心を持ってしまっている。
使用人を増やさないかと何度か提案を受けた時は『王女様は人見知りですので』と断っていたが、ついに、皇帝は押し切る形で元第一王女付きの使用人を増やしてしまった。
愚痴も言えなくなったし、王女に手を上げることも出来ないし、それどころか元王女に対して口出しをする余裕もない。仕事を放り出せないので、他の侍女達と同じことをしなければならず、今までよりずっと仕事量が増えた。
……まずいわ……。
先日、皇帝が元第一王女に贈った数々の宝飾品。
それらをシャロンはこっそり持ち出していた。
ピアスや指輪などの小さなものは服に隠して持ち出し、城に来る商人にこっそり売り払ったし、ネックレスやブローチも服に忍び込ませて王国に送ってしまった。今頃、第二王女殿下の手元に渡っていることだろう。
いつか王国に戻れた時に地位を盤石なものにするための賄賂だったが、まさか、この時期に使用人が増えるとは思いもよらなかった。侍女達が収められた宝飾品を見て『意外と少ないわね』と呟いたのを聞いた時は、心臓が止まりそうだった。
幸い、他の侍女達は仕事に追われてすぐにそんなことなど忘れてしまったようだが、もう、宝飾品を売ったり送ったりは出来そうにない。
三人の目を盗んで持ち出したとしても、なくなれば気付かれてしまう。
王女の部屋にいれば、甲斐甲斐しく世話をされる元王女を見て腹立たしくなるし、控えの間にいても、他の侍女やメイド達は元第一王女の話ばかりするのでうんざりする。
……ああ、本当にイライラするわ!
妾の子のくせに何人もの使用人に傅かれて、まるでそれが当然だというふうに過ごしている元第一王女も、同じ侍女のくせに私を『仕事が出来ない侍女』と言う侍女達も、何もかもが不愉快である。
王国では第二王女殿下のご機嫌を取るのが侍女の仕事だった。
他の雑用はただのメイドの仕事で、侍女は第二王女殿下のちょっとした身の回りのことをすればよかったのに、帝国では侍女の仕事が多すぎる。
……私だけでも王国に呼び戻してもらえないかしら。
しかし、王国から届いた手紙を見てシャロンは固まった。
送ったネックレスやブローチを第二王女殿下がとても気に入り、もっと欲しがっているので送るようにとのことだった。
……こんな状況で持ち出せるわけないじゃない!
それでも、何とかして価値のあるものを送らなければ、第二王女殿下の機嫌を損ねてしまう。そうなれば、もし王国に戻れたとしても、一介のメイドに落とされてしまうかもしれない。
「……そうだわ」
侍女の名前で送れないなら、元第一王女の名を使えばいい。
シャロン・オロークは苛立っていた。
ウィールライト王国の第二王女付きだったというのに、監視役として、第一王女付きに回された挙句、帝国にたったひとりでついてくることになってしまった。
……損な役を押し付けられてしまったわ。
元第一王女の監視役は思っていた以上に大変である。
どうせ帝国でもこの元王女は放置されるだろうから、適当に自分のことは自分でさせようと考えていたのに、どういうわけか皇帝が元第一王女に関心を持ってしまっている。
使用人を増やさないかと何度か提案を受けた時は『王女様は人見知りですので』と断っていたが、ついに、皇帝は押し切る形で元第一王女付きの使用人を増やしてしまった。
愚痴も言えなくなったし、王女に手を上げることも出来ないし、それどころか元王女に対して口出しをする余裕もない。仕事を放り出せないので、他の侍女達と同じことをしなければならず、今までよりずっと仕事量が増えた。
……まずいわ……。
先日、皇帝が元第一王女に贈った数々の宝飾品。
それらをシャロンはこっそり持ち出していた。
ピアスや指輪などの小さなものは服に隠して持ち出し、城に来る商人にこっそり売り払ったし、ネックレスやブローチも服に忍び込ませて王国に送ってしまった。今頃、第二王女殿下の手元に渡っていることだろう。
いつか王国に戻れた時に地位を盤石なものにするための賄賂だったが、まさか、この時期に使用人が増えるとは思いもよらなかった。侍女達が収められた宝飾品を見て『意外と少ないわね』と呟いたのを聞いた時は、心臓が止まりそうだった。
幸い、他の侍女達は仕事に追われてすぐにそんなことなど忘れてしまったようだが、もう、宝飾品を売ったり送ったりは出来そうにない。
三人の目を盗んで持ち出したとしても、なくなれば気付かれてしまう。
王女の部屋にいれば、甲斐甲斐しく世話をされる元王女を見て腹立たしくなるし、控えの間にいても、他の侍女やメイド達は元第一王女の話ばかりするのでうんざりする。
……ああ、本当にイライラするわ!
妾の子のくせに何人もの使用人に傅かれて、まるでそれが当然だというふうに過ごしている元第一王女も、同じ侍女のくせに私を『仕事が出来ない侍女』と言う侍女達も、何もかもが不愉快である。
王国では第二王女殿下のご機嫌を取るのが侍女の仕事だった。
他の雑用はただのメイドの仕事で、侍女は第二王女殿下のちょっとした身の回りのことをすればよかったのに、帝国では侍女の仕事が多すぎる。
……私だけでも王国に呼び戻してもらえないかしら。
しかし、王国から届いた手紙を見てシャロンは固まった。
送ったネックレスやブローチを第二王女殿下がとても気に入り、もっと欲しがっているので送るようにとのことだった。
……こんな状況で持ち出せるわけないじゃない!
それでも、何とかして価値のあるものを送らなければ、第二王女殿下の機嫌を損ねてしまう。そうなれば、もし王国に戻れたとしても、一介のメイドに落とされてしまうかもしれない。
「……そうだわ」
侍女の名前で送れないなら、元第一王女の名を使えばいい。