神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「アタシの真名は、アタシ自身が知る(・・)までは、誰も口に出してはいけない『禁忌』なの。
だから、うっかり口にしないように、愁月(しゅうげつ)から“(まじない)”をかけられたでしょ?
アンタがアタシに、口に出さずに真名を伝えられるまで、その効力は続くわ」

文字を示しながら説明されるのは、何やら学校の授業のようだ。
正直、美穂はあくびが出そうだった。

(つか、だから何って感じなんだけど)

何ソレ意味わかんないと美穂が言うと、セキコは菊に筆と(すずり)と和紙を持って来させ、かな混じりの漢字を書き説明し始めた。

さらに、何ソレ文字つながってて読みにくいと言えば、美穂に自分の名前を書かせ、心得たというように美穂が読める字体を書き出したのだ。

「あのさ。あんたの名前、これに書けばいいんじゃないの?」

セキコの『授業』にあきた美穂は、退屈しのぎにそんな思いつきを言った。

意味ありげに男が笑う。

「そうね。試してみたら?」

筆を持たされ、美穂は昨夜の儀式の終わりに見た、緋色の布地に浮かび上がった文字を思い返す。

(えっと、確か───)
< 11 / 66 >

この作品をシェア

pagetop