恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
 そこから社は大きく変わった。
 社長は二年ほどかけて各部署を洗い出し、大幅な人事異動をできるように経営陣と話し合っていたらしい。我が部署も昇進した人、降格した人に別れた。
 岡島さんも降格の対象の一人だった。コンペ翌日、PR事業部長から岡島さんは降格を言い渡された。

「君の企画として報告を受けたものはほとんど吉平の物だったみたいだな」
 部長は皆の前ではっきりと言い切った。岡島さんはいつものように笑顔を見せて

「確かに彼女が企画立案したものは多いです。ですがチームとして――」
「しかし私に上がってきた報告に彼女の名前はなかった」

 初めて知った事情に私も目を瞬かせる。適材適所、チームで勝とうと話していたことは全て岡島さんの手柄になっていたらしい。彼がここ数年で昇格したのは全て彼の成果となっていたからだ。

「それは誤解ですよ。企画の段階から僕も携わって」

 表情を曇らす岡島さんを見て「新規事業案まで盗ってたしね」小さな囁きが誰かから零れた。先日までなら皆、野暮ったい私とスマートな彼を比べて、彼を信じたかもしれなかった。岡島さんは顔を青くすると、その場から立ち去っていった。

「岡島さん、セクハラも問題みたいだよ」
「え、本当?」
「美山さん…てか社長に小久保さん相談してたみたい、付きまとわれてて助けてくださいって」
「えー? でもどう考えても小久保が岡島さんにまとわりついてたじゃん」
「相談女の手口でしょ、それを口実に社長と喋りたかっただけよ」
「それがまさか彼氏の首をしめるなんてね」
 
 そんな小久保さんは試用期間だったこともあり、正規採用に繋がらないと決まった。
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