略奪☆エルダーボーイ
先輩は私の腕を掴んだままグイッと私を自分の方に引き寄せる。
その瞬間、嫌悪感がふつふつと湧いてきてた。
黒瀬さんにやられた時はなんとも思わなかったのに、だ。
「加藤さん、俺の物になって」
「嫌・・・離して・・・!!」
無理矢理迫ってくる先輩から逃げ出そうともがいていた時、一瞬先輩の腕の力が弱まった気がした。
「ハイ、そこまで」
「!!くっ、黒瀬さん・・・!?」
力が弱まったと思ったら、私の後ろから肩に腕が回ってきて、先輩に掴まれていた手が払いのけられる。
ポスン、と背中に何かが当たった時に後ろを振り返ると、そこには黒瀬さんが私を包み込むように抱き締めていた。
さっきこの先輩に引き寄せられた時は嫌悪感が湧いてきたのに、黒瀬さんに抱き締められてる今はドキドキはすれど嫌悪感は微塵もない。
あぁ・・・なるほど・・・好きだからか。
「さすがに伊吹ちゃんの事考えてなさ過ぎだよね。告白、断られたんでしょ?潔く引きなよ」
「ッ・・・黒瀬には関係ないだろ!?」
「いーや、関係あるね。俺もこの子のこと好きだから。それに、伊吹ちゃんの顔見れば鈍感な君にでもわかるんじゃない?」
「っ・・・」
言い合いをしている中、黒瀬さんの発言で頬が熱を持っていく。
自覚した今、好きだと言われると照れてしまう。
「・・・そう、わかったよ。黒瀬には勝てそうにないしね」
どこか悔しそうにしながら、ハァ・・・とため息をついた後にその場を後にする先輩。
その先輩の姿が見えなくなってきた時、黒瀬さんが一息ついた。
「・・・ふぅ・・・よーやく諦めてくれた・・・伊吹ちゃん、大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
私の事を離しながら聞いてくる黒瀬さんにうつむきながらお礼を言う。
自覚をしてからこうして向き合うの初めてだから、黒瀬さんのこと見れないな・・・。
「・・・それにしても・・・意外だったなー・・・伊吹ちゃんの好きな人」
「え?」
「人の事を脅してくる背の高い先輩・・・それって、俺の事だよね?」
「っ・・・!?き、聞いてたんですか!?」
離れたはずの黒瀬さんが距離を詰めてくる。
でも、どうしてその発言を聞いていたんだろう。
「うん。伊吹ちゃんを迎えに行ったら、伊吹ちゃんが告白されてるかも〜って小日向に教えてもらったからね。ちょっと気になって」
どうやら迎えに行った時につぐみに聞いたみたいだ。
確かにつぐみは先輩が呼びに来た時近くにいたけど・・・!!
つぐみってば何してんのさー・・・!!
「そ、それは・・・」
「ね、伊吹ちゃん。それ、そういう事って思っていい?」
「ち、ちが・・・わないけどっ、そうじゃなくてっ・・・!!」
近付いてくる黒瀬さんから逃げるように後ろに下がるけど、後ろにあった壁に阻まれてしまう。
背中が壁についてしまってからも、黒瀬さんは距離を詰めてきて壁に手をついてきた。