生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

お父様の専属執事は一時的に私に着いて、婚約準備やら、身の回りを整えるのを手伝ってくれることになった。
そのままお兄様夫婦の住む離れへカイウェンとお兄様と一緒に移動する。
カイウェンは、お義母様に見つかると面倒なのは分かっているのかお兄様も一緒にも関わらず、使用人通路を使用して離れへと移動した。
「シエラ様、まずは皇都の使用人の教育が届かず申し訳ありませんでした。婚約が整い辺境伯領へ出立されるまでは、私、カイウェンがしっかりご準備させていただきます」
頭を下げて、礼を尽くされて告げられた言葉は、その態度からも信用出来る。
もっと、こんな大人が近くに居てくれたら良かったのになと思う。
カイウェンもお父様専属であちこち動き回っていたのだろうから、仕方ないのだろうけれど。
「よろしくお願いします。なにがどれくらい必要かも、私には分からないから」
苦笑して告げると、恭しく頭を下げてかしこまりましたと返事をくれた。
「マーマリナは二人妹が出来ると、楽しみにしていたがシエラにほとんど会えないことを気にかけていた。俺も気付くべきだったな、すまなかった」
今一度、移動中にお兄様が謝ってくれた。
その顔には、申し訳ないということがありありと浮かんでいたので私は短い期間になりそうだがお世話になる。
今さらとは思うが、お父様とお兄様は話のできる人なのかもしれないと思い始めていた。
「婚約が整い家を出るまでですが、お世話になります」
そうして、私は離れに着くなり私を見て涙を浮かべるマーマリナお義姉様に抱きしめられたのだった。
じつに記憶に残る初めての抱擁は、義理のお姉様だった。
_____________
デリアンの侍従から、義妹のシエラがしばらく私たちの離れで暮らすと聞いてようやく一安心出来た。
四ヶ月前、私は本宅の義母に伝える事があり本宅に行った時直ぐに引っ込んでしまったが色褪せたメイド服姿のシエラを見つけて驚いた。
結婚式以来全然会えない末の義妹のシエラ。
それに比べると、ちょくちょく会いに来てはあれこれとおねだりしていく上の義妹のアリアンは茶会や夜会や舞踏会に婚約者の公爵子息と出かけている。
 しかし、シエラが出かけたという話は全く聞かない。
 社交デビュー前でも、親と共に出かけた茶会等で友人がいればお茶会に招かれたり、招いたりするものだ。
 それも一切ないのは、侯爵令嬢としておかしい。
 私が嫁いで四年、二年前に出産していたとはいえ忙しい時期以外でも全く顔を合わさないのも、出かけた話を聞かないのもおかしい。
 私は息子のシオンの散歩のついでにと本宅の庭等から様子をうかがって、二か月前ようやく見つけた義妹のシエラはやっぱり色褪せたメイド服で庭掃除をしたり、洗濯を干したりとメイドの仕事をしていたのだ。
 どういうことか、声をかけようと動いたとき気づいてシエラが逃げてしまい本人から話を聞くことができないまま……。
 とにかくデリアンに、しっかりシエラのことを調べるよう掛け合った。 
 しかし、元気にしていると義母が言っているから大丈夫としか言わない。
 私が見かけたシエラは、四年前より少し背が伸びた程度でとても十七歳の令嬢には見えなかったのに……。
 やきもきしても、自分は現侯爵夫人の義母に口を出すことは出来ない。
 とても、歯がゆい二か月だった。
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