クローン人間の僕と人間の彼女

社会

「あら、けんちゃん何処に行くの?」


珍しくスーツに身を包んだ俺に、井戸端会議中のおばさんが話しかけて来る。


「就職活動ですよ」

「…あら、そう。頑張って…」


そして又、おばさん達が話し込む。

話している事は想像がついた。


”後5年で死んじゃうのにね”


俺の事を笑っているんだ…。
面接の前に気分が悪い。

バスに乗ると、さっきの近所のおばさん達との事を忘れる程、気持ち良いくらいの緊張感の襲われた。

働く気なんてこれっぽっちも無かった俺は、今日初めて社会に出る為の第一歩を踏み出すのだ…。

そして面接会場に着く。


「では、次の方どうぞ」

「失礼します。森本健治です。宜しくお願いします」


俺の履歴書を見た瞬間、面接官の顔色が変わった…。


「……。あ~、君クローンの方だね」

「はい」

「寿命は?」

「…はい?」


質問に戸惑う俺に面接官は苛立ちを見せながら聞く。


「寿命は決まってるの?」

「……両親には30歳と言われています」

「後5年?君ね、そういう事は履歴書に書いておかないと…」

「すみません…」

「こっちは忙しいんだ。余計な手間は取らせないでくれ」

「……」

「じゃあ、君はもういいから。部屋を出て」

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