王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
殿下は御者に声をかけた。
「僕の従者が先導するから、それに従ってくれ」
馬車が再び動き出したけれど、殿下はもう口を閉じていた。
私は思い切っておずおずとジュエリーボックスを持った手を差し出した。
「セルジュ殿下……」
ふたりきりの今返しておきたいと思ったのだ。
殿下にしたって、パーティー会場で返されるよりいいだろう。
セルジュ殿下は目を閉じ、鼻から思い切り息を吐いた。
「クロエ、君は……」
「ごめんなさいっ!」
私だって、こんなことをしたくはなかった。
引っ込めたはずの涙が再び溢れてきた。
いったん緩んでしまった涙腺は、涙を留めておけないらしい。
次々と溢れてくる。
「これは一旦返してもらうことにする。だから、もう泣かないで」
セルジュ殿下は私の手からジュエリーボックスを取ると、上着のポケットに仕舞った。
それからハンカチを取り出し、私の顔を押さえるようにして涙を拭いてくれた。