『彩生世界』の聖女じゃないほう ~異世界召喚されました。こうなったらやってみせます完全攻略~
声
美生と彼女の傍を離れないカサハに任せ、私たち三人は廊下へと続く扉付近で待機することにした。
丁度三角になる形で私の右斜め前にナツメ、左斜め前にルーセンが立つ。
「そうそう、ナツメ。さっき聞きそびれたけど」
途端、そわそわとした様子でルーセンが話を切り出した。
美生が玉を探し出すのを、私たちは待つことしかできない。だから境界線や魔獣について徐々に明らかになってきた今、落ち着いていられないのだろう。
「王都の境界線がデフォルトだとすると、イスミナとセンシルカの方に写影の魔法が使われてるってことになるよね」
「ええ」
「じゃあそこに映されてる闇は、いつどこで誰が見た記憶なんだって話にもなるよね」
「そうですね。あれは夜のような『暗さ』ではなく、まるで果てのような『昏さ』でした」
「セネリアが故郷で果てを塞いだって話だったけど」
「俺もそれが気に掛かりました。しかし俺が知る限りでは、あのレベルの大規模な果てはセネリアが生きていた時代にはなかったはずです」
「玉を見つけました!」
一所にいた私たちに向かって、美生が挙げた手を振る。そんな彼女のすぐ横に、位置をずらしたらしい斜めになった木製のチェストが見えた。
「まさか家具の裏にあるとは。よく気付いたな、ミウ」
手のひらを払いながらカサハが言う。
しっかりとした造りな上、金属で装飾が施されたチェスト。見るからに重そうなそれをずらしたのは当然、彼だろう。
「どこかのタイミングで模様替えしたってことも、あるかと思ったんです」
「なるほど。言われてみれば、有り得ない話ではないな」
「チェストより低い位置に玉があるってことは、この辺りに椅子でもあってセネリアは座っていたのかな」
会話に参加しながらルーセンが、二人の元へと向かう。私とナツメも、ルーセンの後に続いた。
「窓際だし、ティーテーブルが置かれていてもおかしくはないよね」
「当時の管理人さんと一緒に座っていたんでしょうか」
ゲームでは今美生が言ったような、誰かとテーブルを挟んで話をしている場面が彼女の頭の中に一瞬浮かぶ。それが見えたことで美生は、玉が家具の裏にあるかもしれないという考えに至るのだ。言明はしていないが、ここにいる彼女もきっとそれが見えたのだろう。
「ありそう。――あ、今思ったけど、王都の果てが塞がってて助かったよね。果てのままだったら、境界線を取っ払ったときに、ミウが果てを発生させたって誤解されるところだった」
「! それは困ります」
意地の悪い顔をしてみせたルーセンに、美生が目を丸くする。
それから彼女は何かを思い出したように、「あっ」と声を上げた。
丁度三角になる形で私の右斜め前にナツメ、左斜め前にルーセンが立つ。
「そうそう、ナツメ。さっき聞きそびれたけど」
途端、そわそわとした様子でルーセンが話を切り出した。
美生が玉を探し出すのを、私たちは待つことしかできない。だから境界線や魔獣について徐々に明らかになってきた今、落ち着いていられないのだろう。
「王都の境界線がデフォルトだとすると、イスミナとセンシルカの方に写影の魔法が使われてるってことになるよね」
「ええ」
「じゃあそこに映されてる闇は、いつどこで誰が見た記憶なんだって話にもなるよね」
「そうですね。あれは夜のような『暗さ』ではなく、まるで果てのような『昏さ』でした」
「セネリアが故郷で果てを塞いだって話だったけど」
「俺もそれが気に掛かりました。しかし俺が知る限りでは、あのレベルの大規模な果てはセネリアが生きていた時代にはなかったはずです」
「玉を見つけました!」
一所にいた私たちに向かって、美生が挙げた手を振る。そんな彼女のすぐ横に、位置をずらしたらしい斜めになった木製のチェストが見えた。
「まさか家具の裏にあるとは。よく気付いたな、ミウ」
手のひらを払いながらカサハが言う。
しっかりとした造りな上、金属で装飾が施されたチェスト。見るからに重そうなそれをずらしたのは当然、彼だろう。
「どこかのタイミングで模様替えしたってことも、あるかと思ったんです」
「なるほど。言われてみれば、有り得ない話ではないな」
「チェストより低い位置に玉があるってことは、この辺りに椅子でもあってセネリアは座っていたのかな」
会話に参加しながらルーセンが、二人の元へと向かう。私とナツメも、ルーセンの後に続いた。
「窓際だし、ティーテーブルが置かれていてもおかしくはないよね」
「当時の管理人さんと一緒に座っていたんでしょうか」
ゲームでは今美生が言ったような、誰かとテーブルを挟んで話をしている場面が彼女の頭の中に一瞬浮かぶ。それが見えたことで美生は、玉が家具の裏にあるかもしれないという考えに至るのだ。言明はしていないが、ここにいる彼女もきっとそれが見えたのだろう。
「ありそう。――あ、今思ったけど、王都の果てが塞がってて助かったよね。果てのままだったら、境界線を取っ払ったときに、ミウが果てを発生させたって誤解されるところだった」
「! それは困ります」
意地の悪い顔をしてみせたルーセンに、美生が目を丸くする。
それから彼女は何かを思い出したように、「あっ」と声を上げた。