帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
「勝手をされては困ります! ここは守護鬼・朱縁様のお屋敷ですよ!?――あうっ!」
「あやかし風情が口やかましい! それくらい承知の上だ。私は自分の花嫁を迎えに来たのだ、返していただく!」

 父の声の後に、利津ともう一人男の声がした。
 知らぬ声に警戒心が沸く。
 これは一体どういう状況なのか。

「琴子!」

 父の前に出て行けば良いのか、隠れれば良いのか。迷っているうちに見つかってしまった。

「あ……お父様」

 久方ぶりに対面した父に、琴子は金縛りにでも遭ったかのように動けなくなる。
 父の厳しい眼差しは、琴子の中に恐怖として植え付けられていたようだ。

「まったく、手紙も返さずにどうしているのかと思えば元気にしているではないか。さあ帰るぞ、そして桐矢家へ嫁ぐ準備をするのだ」
「で、ですが……朱縁様は離縁しないと……」

 手を伸ばす父に、琴子は行けぬ理由を口にする。
 鬼花の本当の役目のことは一通り手紙で伝えていたはずだ。
 毎日来ていた手紙にそれに関しての言葉は無かったが、知らないということはないだろう。
 だが、父はどうでも良いというように鼻を鳴らした。
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