エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
(わ、私じゃない……ってこと?)

 ここまでくれば、美月もさすがに状況を理解した。つまり、恋人である省吾の結婚相手は自分ではなく……彼女なのだ。
 悪びれもせずに甘くほほ笑み合うふたりの姿に、美月は表情を失っていた。自分の恋人が、別の女性と結婚報告をしている。この状況でいったいどんな顔をすればいいのか、さっぱりわからない。

 先ほど美月をからかった同僚にも、心底気まずそうに目を背けられてしまった。

 省吾の話によると由奈は妊娠もしているそうだ。つわりが始まる時期なのでご配慮いただけたら、彼はそんな言葉で話を締めくくった。

(に、妊娠まで……)

 まったく気がつきもせず、のんきに彼は自分の名前をあげるのだろうと信じていた。困るわ!なんて思っていた、数分前までの自分があまりにも滑稽で……全身から力が抜けた。

 美月はズキズキと痛みはじめたこめかみを押さえて考える。

(いや、まぁね。今さら私と省吾さんが結婚するよりは……こっちのほうがありえる話だわ)

 こんな裏切りは想定外だったけれど、彼との関係が終わりに近づいていることは感じていた。

 付き合いはじめたのは二年前。それなりにうまくいっていたと思うけれど、小さな亀裂が生じたのは数か月前のことだ。

『そろそろ結婚も考えないとな』

 彼のその言葉自体は嬉しかった。すぐに結婚したいとまでは思っていなかったけれど、恋人が自分と歩む未来を想像してくれている事実に美月の胸はときめいた。けれど――。
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