イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。

No.25:まとめたプリント

「もーこれじゃあ中間テストやばいよ。なんでこんなに勉強しなくちゃいけないの?」

「柚葉だって日頃から予習復習やってれば、そんなに大変でもないと思うけど」

「はい出たー、それ優等生の言うやつだから。そりゃ華恋はそもそも頭の出来が違うからね。もうわたしなんか……本当に古典とか、この世の中からマジ消えて欲しい」

「柚葉も古典が苦手なんだね」

「? も、って?」

「え? あ、いや……ほら、一般的に古典って苦手な子は苦手じゃん」

「まあそれはそうね。わたしの場合、古典だけじゃないけど」

「逆に得意科目とかあるの?」

「ハリー、うっさい!」

 なんだか賑やかな勉強会になっちゃったな……。
 ファミレスでよかったよ。
 私は鞄の中のファイルケースから、A4でまとめた古典の資料を取り出す。
 
「柚葉、よかったらこれ使って」

「なにこれ?」

「テスト範囲の暗記事項をまとめたものだよ。多分それだけ頭に入れておけば、そんなに悲惨なことにはならないと思う」
 
 これは……もともと宝生君のために作ったものだ。
 手書きのものをコピーしてある。
 もちろん自分でも覚えやすいように作ったつもりだけど。

「えーありがと。うわっ、これ見やすい! よし、古典はこれだけやっておこう」

「三宅さんちょっと見せて。うわ、凄く見やすくまとめてあるね。いいなぁ……三宅さん、これあとでコンビニでコピーさせてよ」

「いいよ。100円ね」

「なんでお金取るの?」

 なんでもいいけど、この2人本当に仲がいい。
 もう本当に付き合っちゃえばいいのに。

「でも柚葉、なんでこれコピーなの? 自分用だったら、コピーする必要ないじゃん」

「え? あー、えっと……柚葉やハリー君も、もしかしたら必要かなって思って」

「えー本当に? 華恋、マジ神!」

「ほら、だから僕にもコピーさせてよ」

「いいよ。500円ね」

「値上幅がエグい!」

 2人のショートコントをBGMに、私も勉強を続けた。
 ドリンクバーだけであんまり粘ると、お店にも迷惑かもしれない。
 しばらく集中して勉強をしていたら、あっという間にいい時間になった。
 帰って夕飯の支度をしないと。

「ねえねえ、明日もまた勉強会やろうよ」

「柚葉ごめん、明日はちょっと用があるんだ」

「そうなんだね。あれ? でもバイトはテスト明けまでないんでしょ?」

「え? う、うん、そうだけど」

 本当に柚葉はムダに鋭い。
 明日は宝生君と市立図書館で勉強会なんだ。

「男と勉強会だったりして?」

「えー! つ、月島さん、そうなの?」

 なんか前にもこのパターン、あったよね?

「ち、ちがうから。ちょっと家の用事だよ」

「そっか。じゃあ仕方ないね。だからハリー、焦り過ぎだって」

「あ、焦ってなんかないって!」

 一番焦ったのは、私かもしれない……。
 私達は会計を済ませ、店の外へ出て解散となった。
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