【改稿版】愛し愛され愛を知る。
それぞれの過去
「ゆうま、おそとであそびたい!」

 ある日、暇を持て余した悠真は家事に追われている真彩に外で遊びたいと駄々をこねる。

「うーん、ママお仕事中だから、今は無理だなぁ。終わるまでお部屋で良い子にしててくれるかな?」
「いや!」
「それじゃあ、金井(かない)さん、申し訳ないんですけど……」
「ママがいい!」

 いつもならば朔太郎が一緒なのだが、今日はどうしても出掛けなくてはならない用事があり、組員の一人、金井 真琴(まこと)が悠真の面倒をみていたのだけど、互いに慣れていない事もあって上手くいかないようで悠真は懐けず真彩にベッタリ状態。

「すみません、真彩さん。悠真くん、俺じゃ気に入らないみたいで……」
「いえ、こちらこそすみません。この子ちょっと人見知りするから我がままばかりで……」

 真琴は三十歳と真彩よりも少し年上で、心優しく大人しい性格なのだが子供は苦手なようで、面倒を見ると言っても一緒に遊んだりはせず、近くで様子を見ているだけ。普段一緒になって遊んでくれたり、言わなくてもやりたい事、欲しい物をくれる朔太郎と無意識のうちに比べてしまっている悠真は真琴では物足りずに懐かないのだと真彩には分かっていた。

 真琴と真彩の間に気まずい空気が流れる中、悠真は玄関の方へ向かって歩いて行く。
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