王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「この二週間、考えていたけど……すぐに答えは出ないわ。気持ちを整理するにはもっと時間が必要だと思うの。でも、結論がいつになるかはわからない。明日かもしれないし、一年後かもしれない。その間、ずっとあなたを待たせ続けるのも悪いわ。だから」

 一旦言葉を句切り、クレアは顔を上げた。
 じっと耳を傾けていたジュリアンは穏やかに微笑み返す。答えを急かすでもなく、結論を邪推して口出しするでもなく、ただ言葉の続きを待っている。
 彼は今この瞬間も、クレアの意思を尊重してくれている。
 その優しさが嬉しい一方、戸惑う気持ちもある。年齢的には自分のほうが余裕があるはずなのに、経験値がまるで違う。ジュリアンは生まれたときから王族として育てられた。ぽっと出の聖女と比べるほうがおこがましいのかもしれない。
 深く考えるのはやめて、クレアは昔のように思ったままに提案する。

「とりあえず、今後は婚約者として徐々にお互いのことを知っていく、っていうのはどう?」
「わかった。クレアがそれでいいなら異議はないよ」
「……正直、あなたが婚約者でホッとしているの」
「え……?」
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