男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
「その、出来れば、社外では俺のことを『副社長』と呼ばないで欲しいんです」

 何処か真剣な面持ちで、彼がそうおっしゃる。

 ……私は、どうしてか意味がわからなくて小首をかしげてしまった。

「いえ、無理だったら構いません。ただ、なんていうか、慣れなくて。プライベートと仕事は別けたいといいますか……」
「……そういうことですか」

 ならば、私は従うだけだ。

 そう思って大きく頷けば、彼が少しだけ表情を緩めてくださった。……そういう表情、少し子供っぽいなぁって。

「では、なんと呼べばいいでしょうか……?」

 無難に「真田さん」でいいのだろうか? いや、むしろそれ以外の呼び方なんてわからない。

「……好きに呼んでくれて、構わないです。ただ」
「……ただ?」
「できれば、名前で呼んでくれたら嬉しいです」

 ……ということは「真田さん」ではないということだろう。

「……丞さん?」
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