強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「君を見ているから」
 悠雅が微笑む。
 咲弥はかあっと顔を赤くした。

 逃げ場など、もうなかった。
 背けた顔を、彼の手で正面を向かせられる。
 まっすぐに見つめる彼と目が合って、鼓動がさらに早くなった。

「愛している」
 彼の顔が近付いてくる。
 咲弥は目を離せなくて、動けなくて、ただ見つめる。

 彼の唇が重なった。
 やわらかくあたたかな感触に驚いていると、至近距離の彼の目が微笑む。

 唇が離れると、咲弥はへなへなと座り込んだ。

 初めてのキスだった。
 キスなんて、つきあって二人の気持ちがはっきりしてからするものだと思っていた。目を開けていればキスなんてされないと思った。
 なのに。

「大丈夫か」
 彼がしゃがみこんで、咲弥にたずねる。
「初めてなのに」
 涙目でにらむと、彼は驚いて咲弥を見つめた。

「本当に? それはなんとも、光栄だ」
 声が弾んでいて、咲弥はいっそう腹が立った。

「き、強制猥褻で捕まえてやる!」
「もう遅い」
 彼は笑う。
「俺の心はもう君に捕まってるから」

「なんでそんなことを恥ずかしげもなく!」
「好きだから。なんどでも言う、君が信じてくれるまで」
 咲弥はもうなにも答えられなかった。

 彼が再びキスをしようとする気配を感じて逃げようとするが、彼の手に優しく頬をおさえられ、抵抗をやめた。

 二度目のキスは、目を閉じて受け入れた。彼は深く優しく、彼女に愛を伝える。
 彼の唇が離れると、咲弥の目は熱く潤んでいた。見つめ合った彼の目が優しく弧を描く。

「俺の心は、一生君に捕まったままだろう」
 咲弥は照れてうつむく。ばくばくと早鐘を打つ鼓動が彼にまで聞こえるかもしれないと思った。

 悠雅は彼女を抱きしめた。
 風が優しく吹いて、二人を包んだ。
 灯台の光が、遠くからきらりと輝いて、通り過ぎていった。


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