強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
 女性が男性から危害を加えられたとき、男性には恐怖や屈辱、そういった心理を理解しきることはできないだろうと思う。どれだけ同情してくれても、結局は同情にすぎないのだ。
 だからこそ女性警察官が寄り添う必要があると咲弥は思っている。

 自分もそうだった。痴漢被害に遭って警察に行ったとき、婦警が親切にしてくれた。父の影響だけではなく、そのときの体験が咲弥を警察官になる夢へと駆り立てた。

「再会したときも、君は仕事に忠実だった。真摯な君に、どんどん惹かれていったよ」
「……やっぱりわからない」
「君は? 俺をどう思ってる?」
「どうって」

 傲慢で自信過剰。
 それが最初の印象だ。
 口説かれて、彼はきっと本気じゃないと思ったのに、どきどきした。
 彼は体を張って咲弥を助けてくれた。
 その事実が、彼の言葉を嘘だと断定できなくさせていた。

「好きって、きっと気のせいですよ。危機的状況だと心拍数が上がって、それで恋だと勘違いするってあるじゃないですか」
 だからきっと、と咲弥は思う。咲弥が悠雅を気にしてしまうのも、きっと気のせいだ。

「錯誤帰属か。それでも俺はかまわない。好きになったことに変わりはないからな」
「ええ……冷静になってください」
「冷静な恋なんてつまらんだろう」
 悠雅が寄って来るから、思わず咲弥はあとじさった。

 どん、と背が車に当たった。
 悠雅は咲弥を車に押し付けるようにして抱きしめる。
 咲弥はもがくが、悠雅は離れようとしない。
 体温が伝わってきて、咲弥の心臓はどきどきする一方だった。
 思いのほか広くて逞しい胸だった。力強い腕は男性警察官よりもしっかりと彼女を抱きしめ、離さない。

「結婚してくれ」
「無理よ」
 さっきはつきあってほしいだったのに、もう結婚になっている。

「必ず「うん」と言わせて見せる」
「無茶苦茶よ」
「実際、君はもう俺のことが好きだろう?」
「なんでそんなに自信満々なのよ」
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