あやかし外交官は愛する身代わり妻と離婚したい
「あーあー、こんなもの」
 一つ目の獄吏が眼の前に来た竜巻を足先でちょいっとはじいた。

 竜巻は向きを変え、風磨に戻る。
「わわ!」
 風磨が避けると、竜巻は静穂に向かってきた。

「きゃあ!」

 思わず避けると、つまづいてころんだ。
「静穂さん!」
 雷刀が慌てて牢に駆け寄る。

 その隙に風磨は走り出した。
「必ず助けに来るからな!」

「待て!」
 獄吏は慌てて風磨を追いかける。

 その姿を見送り、雷刀は静穂を見た。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
 うつむいて静穂は答える。

「勝手にいなくならないでください」
 雷刀の言葉に、さらにうつむいた。



 雷刀の口添えで、静穂は牢から出ることができた。
 バッグを返してもらうと、すぐに肩にかける。

「無鉄砲にも程がありますよ」
「すみません」
 静穂はしおしおとうなだれた。

「でも、なんでここが」
「人間が捕まったと大騒ぎでしたからね」
 呆れた口調に、静穂は恥ずかしくなる。

 雷刀の肩にどこからともなく現れたデンカが上る。

「デンカも! 面白がらずに彼女を止めてください」
 雷刀が咎めると、デンカはククク、と笑った。

「瑞穂之雷様のお連れ様とは存ぜず、申し訳ございませんでした」
 あやかしが深々とお辞儀をする。

「こちらの不手際です。ご迷惑をおかけしました」
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