あやかし外交官は愛する身代わり妻と離婚したい
「あやかしにムリヤリ嫁にされたのか。ひどいことをする!」
 静穂は、彼の発言にまた驚いた。

 なんだろう、この人のこの、勘違いの才能。

「彼女は俺のことが」
「絶対にムリー!」
 思わず静穂は叫んだ。

 風磨は一瞬止まるが、すぐに気を取り直す。

「そんなにこいつがムリか」
「だから!」
 静穂は頭を抱える。

 雷刀は呆れたように息をついた。

「竜巻……」

 技の名前を言おうとした直後、雷刀が指をパチっと鳴らす。

 風磨の全身に電撃が走り、風磨は倒れた。

「う……なにを……」
「なにしたの!?」
「電気で痺れさせただけですよ」
 雷刀が冷たく言う。

「あなたを守るのは私であって、この男ではありません」
 怒りを含んだ声と目だった。
 まるで嫉妬のように見えて、静穂はうろたえた。

「あなたはこんな男が好きなのですか」
「断じて違います!」
 静穂は即答した。

 好きなのはむしろ。

 気が付いた瞬間、息を呑んだ。まるで雷のような衝撃が全身を駆け抜けた。

 静穂は雷刀を見つめた。金に輝く紫の瞳に吸いつけられたように、もう視線を動かせない。

「あなたの魂の輝きは、私の心を奪った」
 雷刀の言葉に、心臓がどきっと脈打つ。

 まるで告白みたいで、鼓動は早くなるばかりだ。

「あなたをほかの男に奪われるなんて、耐えられそうにない」

 なぜ彼はこんなことを言うんだろう。好きって言われているみたいで、静穂は切なくなった。

「ファイナル竜巻昇竜拳!」
 叫び声がして、二人ははっとそちらを見た。
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