あやかし外交官は愛する身代わり妻と離婚したい
 風磨を中心にして今までにない規模の竜巻が起こり、二人を巻き込もうとする。
「見たか、俺の最終奥義!」
 風磨が苦しげにつぶやく。

「結局は竜巻じゃん」
 静穂は思わずつっこんだ。だが、その威力は恥ずかしい技名とは違ってすさまじかった。

「無駄に力だけはあるのが厄介だな」
 雷刀が苦々しくつぶやく。

 あまりの強風に、目をあけているのもやっとだ。
 周囲の木々が風に煽られ、折れる枝もあった。

「危ない!」
 とっさに雷刀の前に出る。

 直後、静穂の腹に大きな枝が当たる。
 彼女は吹き飛ばされるようにして倒れた。

「静穂さん!」
 雷刀が叫ぶ。

 静穂はすぐには返事ができない。地面に体を打ち付けた衝撃で、あちこちが痛かった。

「許しません」
 雷刀の身体から天へ、紫の雷が走った。

 風磨に向って手を差し出す。手の先にぱちぱちと火花が散っている。

「やめて……!」
 静穂はかろうじて声を絞り出した。

「止めるのは、やはりこの男を慕っているからですか」

 直後、静穂は見た。風磨がまんざらでもない顔をしているのを。

「絶対に違う!」

 心の底から静穂は叫んだ。風磨がショックを受けたのが見えた。

「ではなぜ」
「ただ、誰にも傷ついてほしくないだけ」
 雷刀はあきれたようにため息をついた。

「あなたは誰でも助けようとする。相変わらずですね」

 静穂は痛むおなかを押さえていぶかしく雷刀を見た。相変わらずとは、どういうことだろう。

 突如、風が止んだ。

「ああ、来たようですね」
 雷刀が空を見上げる。

 二羽の大きな鳥が現れた。その背には人が乗っている。
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